ゆびきりげんまん

貴方のお家の貴方のお部屋。
私は丹念に磨いた包丁を持って土下座する。

貴方は言った。

「それでお前の気が済むのなら」

さっくり、さっくり、指を切る。
悪いのは貴方。

私と約束をしてくれない指なんていらないでしょう。

貴方は言った。

「そうだ。未来を誓えないこの指は不要だ」

ざっくり、ざっくり、腕を切る。
悪いのは貴方。

一向に私を抱いてくれないこの腕なんていらないでしょう。

「そうだ。お前を抱けないこの腕なんて不要だ」

さっくり、さっくり、唇を削ぐ。
悪いのは貴方。

愛を謳わない唇なんていらないでしょう。

「そうだ。お前に口付けられないこの唇なんて不要だ」

ざっくり、ざっくり、脚を切る。
悪いのは貴方。

私に会いに来ようともしない脚なんていらないでしょう。

「そうだ。お前に歩み寄ることのない脚なんて不要だ」

ぷっつり、ぷっつり、瞳をくり抜く。
悪いのは貴方。

私の姿を薄さない瞳なんていらないでしょう。

「そうだ。お前を見ようとしない瞳なんて不要だ」

ざっくり、ざっくり、性器を切る。
悪いのは貴方。

私と子を成そうとしない性器なんていらないでしょう。

「そうだ。お前と交わろうともしない性器なんて不要だ」

ざっくり、ざっくり、首を切る。
悪いのは貴方。

……抱えられるサイズになれば、貴方は私の物になってくれますか。



涙を落とす私の腕の中で、貴方の生首は再生していく。
みるみるうちに大きくなる身体。
私の力ではすぐに支えられなくなる。

「お前の物になれなくて、ごめん」

少年の姿の神様は私の頭を撫でながら謝った。





fin.
(13/11/10)