マルチエンド1

「なら本当に悪者になってやるさ」

私も影ちゃんも何も言えなかった。
意見するような雰囲気ではなかった。
もう事象は決められていた。

ここでは、黒ちゃんが絶対の存在なのだ。





◇---分岐---◇





どいつもこいつも腹が立つ。
奴等はきっと俺がに手を出せないことを知って嘲笑っているのだ
の記憶が消滅したから。二人の歩みが無かったことになったから。俺のことを忘れたから。
だからからかっている。だから遊んでいる。だから蔑んでいる。
俺の怒りに触れることは死だと判っているから、か弱いを盾にしているんだ。
の後ろでにやにやと笑う奴等を、一人残らず殺し尽くしたい。

だが、それ以上に腹が立つのはだ。
約束したのに。永遠に共にいることを誓ったのに。
それなのに、どうして、他の奴等ばっかりその澄んだ瞳に映す。

あの経験が無ければ、俺達は繋がれないのか。
俺達が進展するのに、あの過去が無いと話にならないのか。
何もないまっさらな状態からは、俺達は結ばれることが出来ないのか。


俺はの腕を掴んで床へ押し倒した。は殴打した衝撃に声を上げる。
恐怖の色が顔一面に広がっていた。まるで、俺が殺してきた奴等みたいだ。
おかしなことだ。俺はを殺したりなんかしないのに。

「……教えてくれ、どうすればお前は俺以外を必要としなくなる」
「く、ろ……」
「壊せば良いのか。全て、全部、この世界でさえも」

そうさ。が行く先々を壊してしまえばいいじゃないか。
が映した全ての景色を無に返してしまえ。
周囲を闇で染め上げ、一人にしてしまおう。

そして、凍えるを俺だけが手を引いてやればいい。
そうすれば、は俺だけを必要とし、他を欲しがることなんてないだろう。他が無いのだから。

「黒ちゃん……ち、ちが」
「何が違うものか。"世界の端"がどこにあるのか教えてやるよ」

奴に繋がれたの首の仕掛けを解析してみる。冷静になった今なら判る。
魔力が込められているという話であるが、どうやらこれは俺達を監視する役目も果たしているようだ。
そうなっているのは今の俺にとって都合が良い。

「おい。テメェ見てんだろ。……宣言通り、テメェを殺してやる。そこで待ってな」

奴が大人しく待っていようと、尻尾を巻いて逃げ出していようとどうでもいい。
魔族が出来る事など、たかが知れている。どこにいようと俺は奴の元に行ける。
さて、怖がっているに奴の醜い姿を見せてやろう。反逆者の末路をな。

「さ、行くぞ」

奴を座標に、ごと移動した。移動先の景色は見慣れた城内。

「逃げなかったか」
「貴様相手に逃げても無駄であろう」

こいつは弱い。
弱いが、俺に敵わないということをちゃんと知っている。
なら既に覚悟は決めたのだろう。
神の怒りを受ける覚悟を。











「元々純魔族でないお前は耐久力に乏しいはずなんだがな」
「……やめて……やめてよ。死なせてあげてよ……」

死んじゃうから止めて、と叫んでいたであったが、とうとう、死なせてあげてという言葉に変わった。

奴は片足、片手を切断された不恰好な姿で城の石造りの壁に打ち付けられている。
腹部には大きな円錐が突き刺さっており、これのお陰で四肢を全て引きちぎっても張り付けのままだ。
これが人間なら出血多量死しているところ。だが、幸いなことにこいつは魔族。
痛みを与えつつ、長時間生かすことが出来る。この時ばかりは、こいつが脆弱な人間でないことを喜んだ。
そうか、この未来があったから、こいつは人間から魔族になる運命を辿ったのか。

「気分はどうだ、魔族の成り損ない」
「っ……最悪だ。気狂いの死神め」

大嫌いでしょうがなかった魔族であるが、こうやって対峙すると哀れに思えてきた。
命だけは助けて欲しいと請い願う奴ならまだ良かったのに。
強がるこいつは、多分虫の息になろうとも俺に反抗するだろう。

かわいそうに。

「お前、そこから何が見える?」
「愚かな男が見える。……望んだものはもう二度と、手中には収まることはないだろう」
「残念。不正解だ」

気に障ったので両眼球を爆破した。
平常より神経を過敏にしてやったせいか、男はひどく苦しんだ。
肉が焦げた匂いが広がり、眼窩から煙が上がる。

「ヴィル!!!」

涙も喉も枯れたはきぃきぃと叫んだ。
このままでは喉を傷つけてしまう。は何故自分を大切にしないのか。
こんな男のために、傷つく必要はない。

「グッ、力があるものが勝つのは、道理……平常心を失うな。でないと貴様は……」

俺は酷い不快感を覚えた。
この男、目を潰す前に口を裂いた方が良かったようだ。
今、この状況でに向けて言葉を投げるだと。
俺はこいつを美しく見せるために、痛めつけているのではない。
の心に残る姿は、醜いものでなくては。

!!!宣言しろ。一切この男と関わらないことを。でないと」
「はい!二度と関わりません!!約束致します。ヴィルヘルムとはもう二度とお会いしません!!」

耳はまだ残してやっているんだから聞こえるだろう。
はお前とは二度と関わらないそうだ。
結局お前がどんな感情をに抱いていたかは判らなかったが、これなら諦めもつくだろう。
お前の手中に、が収まることなんてない。
永遠にだ。

、よく出来ました。……だからもう、奴は必要ない」

の目の前でヴィルヘルムの首を一閃。切断した。
魔族だというのに、奴からは赤い血が吹き零れていく。
怖がり屋のは可哀想にも顔を引きつらせ、下を向いた。
俺の思惑は上手くいった。これではあの魔族を見ることはあるまい。
あんな醜い吐き気のする物体、は見たくないはずだ。

「な、んで……なんで……」

おかしい。
は何故と言っている。この状況下になって、俺に問うている。
ヴィルヘルムを殺した理由を。

。本当に判らないのか?わからないのならば別の奴を、」
「……!!ごめんなさい!!さっきの発言は取り消させて下さい。何でもありませんでした!」
「そうか。それならいい」

どうせ。忘れてしまったは判らないんだろう。
そのように嘘を吐く理由だって、俺のためなんかじゃない。
ここにいない誰かの為。
俺がこんなに想っているのに。それでも尚、他人を気にかけるのか。

腹立たしい気持ちと同時に沸き上がってくる黒神としての本能。
そうだ。これをにぶつけよう。きっとは受け入れてくれる。
だって、あの時もそう言ったんだから。
創造と対をなす俺でいいと、俺がいいと、あの時言ってくれたんだ。

俺はを押し倒した。仕上げのために。

「あの男にもう一度だけ、を見せてやろう」

と奴を向かい合わせにしてやった。双方がよく見えるように。
しかし、は頑なに目を閉じて開こうとしない。ヴィルヘルムの方も眼窩がぽっかりと開いており、血を流している。
変な奴等だ。あれほど近づいていたくせに、俺がお膳立てしたら目を逸らし合うとは。

だがそれでも、優しい俺は最後に一つ、いいことをした。

「……な、なに……冷たい……これ」

俺が渡したソレに触れたはそう言った。
得体のしれないものに恐怖したのか、自分が何を触らされているのか、目を開けて確認した。

「!!!!!!!!!!」

声無き叫び声を上げる。
反射的に手を離し払いのけようとしていたが俺が阻んだ。

「俺もそれほど鬼じゃない。最後くらい奴に良い目に合わせてやろうと思ってな」
「っ……っ、……、…………!」

は激しく首を横に振り、ソレを拒否した。

「そうだ。の気持ちいいところにでも触らせてやるか。
 ほら、。"アイツの手"に触らせてやりな」

引き千切ったられたせいで組織が飛び出す奴の腕を持つの腕を持って、秘めやかな場所へと誘った。

「っ!?い、いや!やめて!!」

超音波のようなキーキーとした声を更に張り上げ、は奴の腕が己に触れられることを拒否した。

「どうした?触りたくないのか。お前が気に入っていたヴィルヘルムだぞ」
「や、やめて下さい……こんなの見たくないです……」

こんなの、とは。

「そうか。ふふ、そうか!!はもう醜い魔族なんて一切見たくないし、触れたくない。そうだな!!」

俺は奴の腕を回収した。は引きつりつつもほっとした表情を浮かべている。
爽快な気分だ。こんなに晴れ晴れとした気持ちになれたのは久しい。

が嫌ならしょうがないな!こんな汚い肉片ども、処分しよう」

俺は奴の残骸を跡形もなく燃やした。揺らめく炎を、はぼうっと眺めている。
きっと、さっきの肉片が怖かったせいで、今は放心状態なのだろう。

「ほら、大丈夫だよ。の怖いものは全部なくなったから」

身体を小さく丸めて怖がるをふんわりと抱きしめた。
あんな汚いものを見させられて、は辛かっただろうな。
でももう無くなったから。

「この城にいる必要もない、家に帰ろう。俺達の家に。二人の家に」

俺が微笑むと、は先ほどとはうって変わって笑みを浮かべた。
それはとても綺麗な微笑だった。











は奴には首輪を付けられた。初めては取られてしまった。
奴と同じ事はしたくないと思った結果、足輪を付けてやることにした。
首の時はチョーカーだったが、今回は判りやすく鎖にしてみた。
ジャラジャラと鳴る音は、まるで猫の鈴のようで愛らしい。
も喜んでいるようだった。常に微笑を浮かべている。
あの男を殺したのは正解だった。も心を入れ替えたのだろう。
今後は他の奴等なんて見ないに違いない。

「そうだ。に一つお願いがあるんだ。出来るか」

は小さく頷いた。

「いい子だ。なら……」

俺は抱き上げていたを床に下し、自分だけベッドに腰掛けた。
ベルトを外し、ズボンや下着を下ろしていく。
はそんな俺をジッと見つめていた。羞恥心はないようだ。
何度も共に風呂に入っているため、男性器に慣れたのだろう。

「……、あーんして」

俺の足の間に収まったは、俺の手が導く通りに動いて、俺のものの先端を咥えた。

「……舐めろ」

いい子のは俺のお願いを受け入れ、小さな舌でちろちろと舐めた。
先端部分の裂け目ばかりだ。流石にこれでは俺の膨れ上がった欲は収まらない。

。そうじゃない。口開けて、もっと、奥まで……」

後頭部を持って俺の方へ引き寄せるが、の口が窮屈過ぎて入らない。
途中で止まってしまい、奥まで行けない。

「駄目か。頑張っても入らない?」
「っん、んぁ、んーー」

このまま無理やり突っ込もうにも、歯が邪魔だ。いっそ全部抜いてしまうか。
いや、それでもの口は小さすぎる。

「くそっ、使いたくない手ではあるが」

仕方なく俺はの身体を歳相応のものに戻した。
あまり好きじゃない方の。俺を置いて成長してしまった嘘吐きなの姿。

「んぐ」
「はは……こっちなら全部入るな」

嘘吐きでも

「ちゃんとしてくれよ」

苦しそうに息をするは咥えながら必死に舌を動かしている。

「咥えたまま、動くんだ」

の頭を掴み前後に動かした。
生暖かい肉が俺を聖母のように優しく包んでくれる。
自分の手でするのとは大違いだ。
唾液のおかげで滑りもいい。一番奥へ押しこめば、狭い喉が俺の先端をきゅっと締め付けてくれる。
は先程からえづいてばかりだ。風邪なのかもしれない。
これが終わったら、手厚く看病してやらなければ。

「もっと舌を使って……」

身体を大きいものにしても口内が狭いのか、の舌使いは上手ではない。
唇から顎にかけて唾液をたれさせながら、同じ所ばかりを舐めている。
しかし、にとって初めてのことだから仕方がない。
昔だってこんなことはにさせていなかった。

「出すからな。……だから、ちゃんと、受け止めて……」

掴んだ頭の動きを早め、俺は高みへ登っていく。
外界の穢れに染まったからじゅぶじゅぶといういやらしい音がたつのを聞くと、笑みがこぼれてくる。
この行為を何度も続ければ、の穢れだって浄化されていくだろう。
そうさ、ここにいれば、昔の、無垢で美しいに戻っていく。
そしてそんなに、黒神なんていうゴミみたいな存在の俺の欲を受け止めてもらえる。
興奮が最高潮に達した時、どろっとした白濁液がの口の端からだらりと流れた。

「……飲み込め。零した分も全部」

は喉を大きく鳴らした。舌を伸ばして口の周囲に散ったものを舐めていく。
それでは限界があると思ったのか、指を使って零れた液体を拭い口に運んだ。
白濁と唾液にまみれた俺のものをもう一度自分から口に入れ、筋のあたり、首のあたり、皮も丁寧に舐めとった。

「ああ、凄く綺麗だよ。。よく出来たな」

出来たご褒美にの額にキスをした。

「愛してるよ、。言って、も」
「……ぁ、……あ。……あい、してる」
!」

跪くを引っ張りあげ、そのまま強く抱きしめた。

「そうだよな!俺がを愛しているように、も俺を愛してくれている!!」

は返事をする代わりに、さっきからずっと微笑み続けている。

「これが、俺の理想としていた"世界"!二人だけの、俺とだけの"世界"だ!!」











「っ、ひぅ!」
「やっぱり、最初はキツイな……。こんなものとは」

昔から願ってやまなかった、と身体で繋がる行為。
あの時は、恥ずかしかったり、が痛がったり、怖くて出来なかった。
神と人間という違いのせいで、を苦しめてしまうことを躊躇っていた。
でも今は違う。もう吹っ切った。
神も人間も関係ない。俺達は愛し合っている。その為に必要な行為はやはり必要なのだ。
種族差なんて小さな問題だ。俺達が愛を確認しあう術を遠ざけ続けたほうが問題だった。
それにだって望んでた。人間流の愛のやり取りを欲していた。
だから、俺はあの日、神の身体を捨てたんだ。
捨てて、と同じ人間の身体に作り替えた。

「だがこれくらい出来るに決まってるよな」

硬直しきっている秘所へ、硬くなった己をねじ込む。
一向に開く様子はないし、潤滑しないせいでこちらもかなり痛い。

「っくぅ……ぐ……」
「どうした?なかなかいかせてもらえないが」

歯を食いしばるを見るとあちらも痛いのだろう。
それをみて安心した。
俺達は痛みを共有している。それはどんな言葉よりも信用できた。

「っはぁ!……はぁはぁ……」

心に少し余裕が出来た俺は一度自身を引き、入り口を己の先端で軽く撫で付け、少し挿れたらまた引くという行為を繰り返した。

焦る必要はないんだ。もう邪魔者はいないのだから。
一番厄介な魔族はの中で肉片となった。
が信頼しつつあった人間たちはどうせここには来られない。
そして、唯一俺に対抗することが出来るMZDも何の力もない精神体となった。
肉体の回復にはまだまだ時間が必要であるし、回復する前に再度俺が壊してしまえば、奴はもう二度と世界に具現化することはない。

「っふ……うぅ……」
「少し入ったな……。
 なぁ、。焦らされるのも良いが、俺は早くお前の中に入りたい。
 ……もしかして、俺を嫌がっているのか」

は大きく首を振ってすすり泣いた。
可哀想に。も俺のものを欲しているというのに、人間の身体が俺達に手間を取らせる。
欲しがるに早くこの、熱を持った俺の欲望を与えてやりたい。

俺は抽送行為を止め、溢れる愛液を先端でもっての秘所に塗りたくる。
ひくりひくりと俺を待っているその蜜部を見る。
俺は一息ついて、勢いよく奥まで突き刺した。

「ひぃいあ!!あ……ぐ……う……」

言葉を失うくらい、は喜んでいるようだ。
そうだろうな。俺だって、ようやく念願叶ったと高揚が止まらない。
この指先まで伝わる充実感。
閨事というものを繁殖に必要な一行為としてしか捉えていたが改めた方が良さそうだ。
俺がこんな、遺伝子の交わりなんてままごとに安息と快楽を感じているなんて、破壊の神が聞いて呆れる。

愛しいとの結合部に視線を寄せた。

「……ちゃんと貞操は守っていたんだな」

粘液と混じりあう破瓜の血を指で拭った。

「ほらこれが、が俺のことを愛してくれていた証拠だ」

赤く染まった少しどろっとしたどちらかの粘液を纏った指をの口に差し込んだ。
奥に入れすぎたせいか、はえづいた。顔を背けて逃げようとするので、の額を抑えつけてお願いした。

「しっかり味わえ」

優しいは俺の要望をしっかりと叶えてくれた。
たどたどしいながらも、俺の指一本一本丁寧に舐めて二人が繋がった記念の雫を飲み干していく。
破瓜はたった一度のもの。過去の記憶のように無くなってしまうのならば、
二人の軌跡をの身体に流しこんでおこう。一体となれば永遠だから。

。もういいぞ。口を開けて」

から手を引き抜くと、唾液でぐちゃぐちゃになっていた。
俺の手なのにの匂いがする。幸せだ。

ぬるぬるとした手での胸の先端を弄びながら、俺は抽送作業を開始した。
どのような体勢ならばが喜んでくれるのかと様々な角度を試したが、結局どの角度であってもは可愛げな声を上げた。
鼻に抜ける甲高い嬌声は、ちっちゃくて可愛いを更に可愛く魅せた。
小さいのにこちらに向いてつんと立つ充血しきった胸も可愛い。
泣いている顔も可愛い。俺の手を舐めてる際に唇からはみ出た血の混じった唾液も可愛い。
俺の歯型の痕が残る腕も可愛い。花弁だらけの鎖骨も可愛い。
叩かれて真っ赤になった薄いお尻も可愛い。足枷だってよく似合っていて可愛い。
に関する何もかもが愛しくてしょうがない。

俺は前後運動の速度を速めた。ストロークは長めに。そして奥へ遠慮無く突く。
新しい命を包むというこの臓器が壊れたっていい。
赤子は俺からを奪うのだから、敵でしか無い。
ようやく俺だけになったんだ。もう二度とを他の奴等に渡さない。
壊れろ。壊れろ。壊れろ。

っ。出る……。出すから、な」

最後に奥へ自分を突き刺し、熱い白濁液もどきをの中に注いでいく。
一滴たりとも外には出さない。俺から出たものは全部のものだから。

嬉しい?俺の入って、幸せ?」

そう聞くとは嬉しそうに微笑んで頷いた。
その表情を見るとようやくと通じ合ったと思える。

俺の身体から出たものは遺伝子情報が一切ないものなのに。ここだけは人間になれなかったのに。
それなのには喜んでくれている。ずっと笑ってくれる。
心に熱いものが込みあげた俺は、の中を堪能し続ける己を取り出した。
紅白交じり合った液体が零れぬように、急いで半開きのの口に突っ込む。

「これが、俺達の始まりの味だ。ちゃんと味わえ」

そう言うと、は先ほどと同じように丁寧に舐めていった。
出したばかりで敏感な先端から始まり、筋や首の部分も余すこと無く生暖かい舌が攻め続ける。
思わずを押しやってしまいそうになるほど、ぞくぞくとこみ上げてくる快感。
鉄の匂いと精の匂いが溶け合う中で跪くの背中を指でなぞる。
規則正しく並ぶ背骨に爪を立てた。びくんと跳ねたは舌の動きを一瞬止めた。

「止めるな。全部綺麗にするまで一瞬足りとも」

舌の動きが早まった。
普段のからは想像出来ない、いやらしくみっともない音を立てて男の象徴に食らいつく彼女は汚らしかった。
外界になんてものに染まった穢らわしい、吐き気を催す存在だ。
でも、俺だけは、そんなを愛してやれる。
大事に、大事に、仕舞って、全てを受け入れる。

かつてが俺を受け入れてくれたように。
いや、その言い方は間違いだ
今もは、オレの全てを受け入れてくれている。











黒神は欲しいものを手に入れた。
は素直で黒神の命令は絶対という従順さを見せる。
だが、黒神は満たされない。
何故足りないのだろう。何が足りないのだろう。
一番欲しかったは手中にあるというのに。

答えを見つけるため、黒神は何度もを犯した。
無茶苦茶な命令も行い、の心を試した。
己の身体に傷をつけることも命令した。
それら全ては遂行した。
一切反抗すること無く、厭わず、微笑を浮かべ、望みを叶えた。
それなのに、満たされない。何が足りないのか。

……俺をどう思う」
「愛シテオリマス。黒神様」



世界は神を失った。
バランスを崩し、崩壊していった世界でMZDと黒神とだけが残り。
しかし、MZDは精神体のまま。


肉体を持つのは黒神との二人だけである。



……。俺は永遠を手に入れられたかな」
「エエ。オ陰デ私ハ歳ヲ取ルコトモ無ク、イツマデモコノ姿デ御座イマス」
「……ずっと、傍に居てくれるか」
「私達ハ永遠ニ……」





"永遠"が終わる日はすぐそこ。







壊れたお人形 END


(13/06/07)
マルチエンド風。嘘です、冗談です。
そんな未来もあったかもねっていう。