第15話-ろりろり-

雨──。

かったりぃけど、ブラ透けが拝める大事な日だ。
だからオレは天気の悪い時に休んだ時がない。男ならそうだろ?

「うわっ、ニッキー」

さすがオレ様。認知度バッチリだぜ。
バリバリ引かれてっけど、そういうもんだよな。
最初は嫌われてても後から好感度の上がるシチュエーションがくりゃ、大抵なんとかなるもんだ。
ギャップ萌え的な。
だから、オレ様はぜんっぜん気にしない。

「よう、ニッキー。お前が教えてくれたアレ、滅茶苦茶良かったぜ!」
「だろ!オレの眼は正しいんだって」
「お前が発掘してくるのはいいのばっかだよ。サンキューな」

野郎とそういう話ばっかしているせいで、オレの周りは女子連中は近づかない。
席替えで近くになった日には、泣く奴、慰める奴、罵倒する奴が出てくる。
でもよー、おかしい話だぜ。
そんなことしつつも、裏ではズコバコ彼氏とヤってたりする。
何、かまととぶってんだよ、オープンでいいじゃん。
どいつもこいつも頭の中はヤることばっかなんだからよ。

「ニッキー、次移動だぞ」
「あー、先行って。便所寄ってく」
「自家発電すんなよ」
「オレ、お前みたいに早漏じゃねぇし」
「うっせ。ばーか」

つーことで、出すもん出して、教室へ向かう。
そんな時だった。



────オレは、運命の出会いを果たしたんだ。



前方を歩く小柄な女の子は生徒用ではなく、教師用のジャージを羽織っていた。
ジャージの裾から白い生足が伸びていて、素足に上靴だ。
見た目のインパクトは核に匹敵するほど強大だった。
この子の顔が見たい。そう強く思う。
こんなに興奮させられても、顔が残念とか最悪だからな。
もしそうだとしても、傷は浅い方がいい。

オレはゆっくりとその子に近づく。怪しまれない程度に。
ふっと、その子が後ろを振り返った。
じっと見て小首を傾げた後、また歩き始めた。

おおおおおおおおお!!!!
超感動!!!平均値以上!!!
ロリフェイスのぺったん!
これが巨乳だったらと思うとマジ残念。
でも、その筋なら良い抜き対象なのは間違いない。

後ろからずっと見てて思うけど、この子の足が凄く……いい。
肉がつきすぎず、なさすぎず。
手を這わせたら吸い付いてしまうような、エロい脚部。
つーか、オレともあろう者が、なんでこんな逸材見逃してたんだよ!
こんなロリロリ美少女、超レアじゃん!
これはもう、話しかけるしかないっしょ!!

「Yo、そこの可愛い子、お名前は?」

その子は肩を震わせ、ゆっくりとオレの方へ向いた。
おびえた様子が、まるで小動物だ。
くそっ、なんて、なんてそそられる態度を取るんだ。
こんな子に迫ることを考えると、滅茶苦茶興奮するぜ。

……です」
「へぇ、ちゃんっていうのか。可愛いじゃん」
「……あ、ありが、……とう………」

見れば見るほど可愛い怯え方をする。
それにしても、小学生みたいだ。でもこの校舎は高等部の奴しか使わねぇからなぁ。

ちゃん、どこのクラス」
「ひ、ひみつ、です」
「いいじゃん。教えてくれよ。こんな可愛い娘のクラス知らねぇなんて、オレマジダセェじゃん」

凄い勢いで頭を横に振るちゃん。
嫌がってる美少女に無理やり聞きだす、無理やり、なんて、そんな、単語だけで超興奮する。

「は、鼻血出ちゃいましたよ!」

ヤベヤベー。オレとしたことが、妄想だけでイっちまう。

「あの、…てっしゅ、使います?」

ポケットティッシュをこちらにおずおずと差し出してくる。
オレはすかさずティッシュではなく、ちゃんの手を掴む。
マジかよ、スッゲーすべすべしている。舐めたい。

「早く血を止めないと、危ないですよ!」
「心配してくれるんだ。やっさしぃ~」

近づいたおかげで、ちゃんのことがより分かる。
髪からはこの学校の生徒からは滅多に嗅がない香りが漂う。
主張しすぎない甘い匂いは、纏う人間そのものを引き立たせている。
近づこうとも欠点が見当たらない、このしっとりとした肌理細やかな肌。
困ったように曲げる唇は瑞々しく白い肌に映える紅色。
おっぱいはゼロ。成長する見込みを感じない。全く。全然。将来性なし。

ジャージということは、きっとこのファスナーを下げてしまえば、
秘められた場所が全て光の下に晒される事になるんだろう。
という事は、無粋にファスナーを下げずに、バックで犯す方が興奮するな。

「あの…だから、鼻血を」
ちゃん」
「はい?」
「オレと今夜フィーバーしない?」
「お前は何馬鹿やってんだ!!」

空を切る音とともに、オレの意識が一瞬飛ぶ。
おいおい、誰だよ。

「なんだ、リュータか」
「何してんだよ!!完全変質者じゃねぇか!」
「それもなかなか輝かしい称号だな」
「褒めてねぇから」
「リュータ。この人怖い」
「だよな。おい、離してやれよ」
「やだ」

ふうん、リュータの知り合いか。

「お前こんな美少女知ってるなら教えろよ。ほら、触ってみ?マジ気持ちいいから」

袖口から中に指を進み入れるとちゃんが小さく身体を震わせる。
あ、スッゲー可愛い。罵倒もせずこんな反応するなんて、新鮮だぜ。
周りがこそこそ騒いでっけど、気にしない。

「俺をお前と一緒にすんな!」
「ンだよ。毎晩シコってるくせに。同志☆」
「黙れ」

頑張ってオレから逃れようとするちゃんだが、力はオレの方が強いし無理。
リュータが引き剥がそうとしてっけど、オレだってンな簡単に離すかよ。

「やだ…。黒ちゃん…MZD…」
「え?MZDって」

ちゃんからMZDの言葉が出てすぐ、本人がオレたちの近くに現れた。

「ようニッキー、って!!に何してんだよ」

驚いて力が緩んだ隙に、MZDはオレからちゃんをさっと引き剥がす。

「MZDっ!」

オレの天使ちゃんは勢いよくMZDに飛びついた。
それを慣れた手つきで横抱きにする。

「お前の熱いパッションは知ってっけど、うちの子には容赦してくれよ」
「うちの子?てことは、噂になってた、MZDと住んでる女の子って……」
「厳密にはオレじゃなくて弟とな」

マジか。
なんか噂とは全然違う無害っぷりじゃん。しかも可愛いし。
ンだよ、ブスで残念で性格悪いって聞いてたのに、全部嘘じゃねぇかよ。
本物は超可愛いし、背が小さくて可愛いし、口も悪くないし、マジいいにおいだし、うはっ。

「また……。お前、汚ぇんだよ」
「ほれ」

MZDが先ほどちゃんが差し出したティッシュを押し付けてきた。
オレはとりあえず鼻につっこむ。

制服はどうした?」
「ずぶぬれになっちゃって、今日体育ないから誰も持ってなくて、DTO先生に借りたの」
「上着だけなんて可愛い格好してるから、ニッキーみたいなのが釣れたんじゃん」
「ごめんなさい。下は大きすぎて着れなくって」
「そっか。ただ、もあまり肌を晒すな。男なんて単純なんだから」

そう言って、MZDはちゃんの太ももを撫でた。
少し身をよじったちゃん。でも、抵抗は一切見せない。
超羨ましいんですけど!

「……MZD」

未だにを抱き上げるMZDにオレは言った。

「娘さんをオレに下さい!」
「やんねぇよ!!!」

ンな強く言わなくてもいいじゃねぇかよ。ちぇー。

「ねぇMZD、あの人鼻血ばっかり出してるけど、大丈夫なの?」
「いいのいいの。若いから」
「そっか」

うほー。笑った顔可愛いじゃん!
マジで…いい。これはそそる。いいロリだ。

「リュータと同じクラスだよな?」
「そうだけど。って来んなよ。確実にびびるから。
 それにお前といると女子受けが悪くなるから嫌だ」
「何猫かぶってんだよ。男なんて皆ケダモノだぜ」
「頼むからの前では止めてくれ」

MZDに耳をふさがれたちゃんはキョトンとしている。

は何も知らねぇんだよ」
「超レアじゃん!純粋無垢そのものじゃん!卑猥なこと言わせたら興奮するだろうぜ」

こんな子普通いないぜ!純粋ぶった女は沢山いっけど、本当に知らない奴なんていないぜ!
あ、MZDがすんげー嫌そうにオレを見てやがる。

「……自分とこの子が言われてるとすげー嫌な気分になるな」
「身内ネタって辛ぇし。お前も黙っとけよ」
「なんだよ!オレ今超テンションアゲアゲだぜ!
 こんな可愛い子がいたなんて、夢みたいじゃんYo!」
「……リュータ。を頼んだ」
「うん。きっとサユリがガードすると思うぜ。生真面目だから」
「そりゃよかった」

オレ今スゲー楽しい。こんな子に会えるなんて、今日はついてる。
学校行ってて良かったー。雨の日最高!!

「……さっき、黒ちゃん来るかと思った」
「アイツも同時に呼び出されたさ。オレが止めたよ。良かったろ?」
「うん。もし来てたら危なかったね」
「何の話?」

なーんか二人がこそこそと話してるから、無理やり介入してみる。
やっぱこの二人仲いいんだな。でも一緒には住んでないんだっけ。
てことは、弟の黒神って奴はもっとちゃんと仲がいいのか。

「なんでもねぇよ。それより、お前ら授業は?」
「やべっ。行くぞ」
「うん」

MZDから飛び降りると、ちゃんの服はジャージから制服へと変わる。
ほう、ネクタイに、サイハイか……これ選んだやつ、分かってるな。

「ありがと、MZD!」
「じゃーな」

MZDが消えたのを確認してから、オレはちゃんに手を伸ばす。
が、リュータに弾かれる。

「お前も授業だろ。行くぞ」

歩幅が違うせいで、忙しなくついて行くちゃん。
うーん、可愛い!!最高!!!







そんなこんなで、オレは初めて会ったちゃんに、興味津々だった。
昼休みには勿論ちゃんのクラスに突撃した。
でも、ちゃんはオレのトークに完全に固まって、結局ろくに話せずじまい。
しかも、サユリがうっせーのなんのって。

で、オレは、同じ轍を踏まないためにも、ちゃんの調査を開始した。
取っ掛かりが分かれば、簡単に攻略できるだろ。暫くは楽しめるさ。




── 一人目、サイバー

?アイツさアニメに詳しいのなんのって。オレについてこれる素晴らしい隊員だぜ」
「お前はまだアニメ言ってんのかよ。三次元見ろよ」
「ヒーローショーも行ってるから、三次元もだぞ」
「うわっ、ドン引き。じゃなくて、ちゃんの話!」
「いい奴だぞ。ただ、よくわかんねぇことが多いけど」
「例えば」
「最近楽しそうなんだけどさ、秘密って言って教えてくんねぇの」
「秘密?」
「それと、二週間くらい失踪してたんだけどさ、そのことも教えてくんねぇの」



── 二人目、リュータ

「ストーカー」
「うっせ。ちゃんのこと教えろよ」
「やめてやれよ。見てて痛々しいんだよ」
「さっさと教えねぇと、お前が気にしてるあの子に、」
「わーったよ!」

はな、よくわかんねぇ」
「サイバーと同じかよ」
「サイバーはさ、何だかんだでフィーリングが合ってんだよ。
 俺はなんつーか、それを遠目で見てる感じ。危なっかしいからな」
「ふうん。そういやさ、ちゃんって結構怖がられてっけど」
「あー。MZDと黒神に可愛がられてるからな。気持ちはわからなくもないけど、どいつも過剰に反応しすぎなんだよ。
 まぁでも、実際黒神はなー。半端なく冷たそうで怖ぇんだよな」
「オレそいつ一度も見たことねぇんだよな。どんな奴?」
「んー、氷みたいな奴。でも、にだけは滅茶苦茶優しいの」
「溺愛?」
「それ!見てて恥ずかしくなるぜ!恋人かよ!って」



── 三人目、ハヤト

「僕、ニッキー先輩のこと嫌いなんで勘弁してくれませんか」
「性格悪すぎだろ」
「で、さんでしたっけ。さんは……あまり関わらない方が良さそうなタイプですね」
「ああ、嫌いだったか」
「警戒です。ふわふわしてるんですよ。自分の意思が薄弱で親代わりの二人に忠実で。
 善悪感情は正常ですけど、二人に関してはすぐにタガが外れますよ。
 以前問題を起こした時も、二人の悪口が起因で相手に負傷させてますから」
「わぁお、バイオレンス。Mかと思ったらSもありか」
「あと、年上には簡単に懐く感じですね。最近年上の男性の家に上がりこんでるそうで」
「援助あり?」
「ありません!そんな方ではないです。第一援助されなくとも金銭に困ってませんし」
「神スゲー」
「…まぁ、可哀想な人ですよ。異質故に他人に受け入れてもらえないんですから」



── ラスボス、サユリ

「一切話すことはありません!!」
「そこをなんとか。悪用しねぇから、な?」
「嘘。最近さんに付きまとって、怖がらせてるじゃない!」
「いやいや、普通に友達になりたいんだって、これ以上怖がらせたら可哀想じゃん」
「ニッキーのせいでしょ!!」

「本当、ただ仲良くしたいだけだって」
「信用できない」
「今度は怖がらせないように、お前ら全員に話聞いてるんだぜ。このオレが!」
「……少しだけだからね」

さんはいつも楽しそうにしてるの。でも、たまに困った顔をする。
 以前聞いたら、人とどう接していいのかわからないって、言ってた。
 変なことを言って嫌われたくないからって」
「だから、わかんねぇ奴って言われてんのか」
さんはね、MZDや黒神さんの話を振ると、とても楽しそうに話してくれるよ。
 余程二人のことが好きなのね」
「そういやさ、黒神って怖いの?」
「そう見えるだけじゃないかな。一度しか話したことないけど、丁寧な人だったよ」
「わっかんねーなぁ」

さんは、ずっと異次元に住んでたせいか、子供のまま時間が止まっているみたい。
 いくら私たちと歳が同じでも、なかなか打ち解けられないのは、そのせいもあると思う。
 最近おじさんが、おじさんがって話すのを聞くと、安心できる大人を探し当てたみたい」
「お前、さっすが……。よくわかってんなぁ」
「話してれば分かるし、さんは聞かれたことはちゃんと教えてくれるよ」

後はDTOにも聞いてみたが、嫌なこったと一蹴された。
でもアドバイスをくれる辺りが教師だ。

「落ち着いて優しく接してやれば、警戒をといてくれるさ。
 ま、仲良くしてやってくれ。興味を持たれた時点で、アイツは喜んでるさ」




────ということで、大体ちゃんのことは分かった気がしたりしなかったり。
つか、どいつもこいつもちゃんをろくに知らねぇんだよな。
これはもう、直接オレが行くしかねぇじゃん。

ちゃーん」

廊下を歩いていたちゃんは突然、オレから逃げるように走り出した。
その後を急いで追いかける。

「なんで逃げんだよ~」
「だって、怖いんだもん!」

頑張ってるようだがちゃんの足はそんな早くねぇ。
それより、走るたびに中が見えそうなのが気になる。
やっぱ子供パンツか。それとも下着は大人か。どっちだ。

「追いかけてこないで!」
「じゃあ、逃げんなよ」

直角に曲がり、階段に差し掛かる。
ちゃんは一段飛ばして、オレは二段飛ばして階段を下りていく。
その途中、ちゃんが前へつんのめり、完全に体制を崩した。

ちゃん!」

咄嗟に手を伸ばしたから、ちゃんを掴めたけど、こりゃ庇ってやれねぇや。
あーあ、こんな上から落ちるなんて相当痛ぇだろうよ。

「っ…。いってー……くない!」

オレの下には、ちゃんが。小さな腕でオレを抱きしめてる。
だからオレ痛くなかったのか。庇うつもりが、庇われた。
さすがのオレでもその感触にサヨナラを告げ、ちゃんから降りた。

「大丈夫か!?」
「やっちゃった……」

起き上がったちゃんが、オレの腰辺りをきゅっと掴む。
何うろたえてんだ。

「ど、どこが痛い?」
「どこも痛くない。上手くいったから」
「じゃあ、良かったじゃん」
「違うの。それは良かったけどそうじゃなくて。
 ……どうしよ、黒ちゃんにバレちゃう。怒られる……」

黒ちゃんっていうのは、黒神か。
つか、怪我がなかったのはいいことじゃねぇか。困ることなんかないだろ。

「ニッキー、さっきのこと秘密にして欲しいの。私がさっきしたこと」
「したって、何を?」

更に顔面蒼白になるちゃん。オレなんかマズったか?

。証拠隠滅を図ろうと無駄だ」

この声はMZDか。
いや、違う。見た目も殆ど同じだけど、MZDはこんなにヤバそうな感じを出さねぇ。
ってことは、こいつが──。

、痛いところはないか?」
「ない…よ。大丈夫」
「良かった」

そう言って、黒神はちゃんを抱きしめる。
これ、普段からやりまくってるだろ。
あまりにもお互いに慣れすぎてる。

「でも、だからと言って、約束を破っていいとはならない」

ぴくりと震えたちゃんから離れた黒神はオレを睨む。
こりゃ怖ぇや。マジでリュータの言う通りちゃんと差がありすぎ。

「まさかこんなにも早く他人にバレるとはな」
「そのさっきからバレるって何なんだよ。ちゃんが何したんだよ」
「なんだ。分かっていないのなら、これからもお前が知る必要はない」

かちんとくる。こいつ相当ムカツク奴だぜ。

「ニッキーは何も悪くないの。引き上げようとしてくれたんだよ?」
「しくじってるがな」

うぜっ。そりゃそうだけどよ!寧ろちゃんに庇われたけどよ!

「じゃあ、……これから、どうすればいいの?」
「このやり取りの記憶を消す。それでいい」
「それは嫌だ。それ以外なら受けてやんよ」

折角のちゃんとの記憶を消されてたまるかっての。
抱きしめられた感触とか、脚とか、パンツとか。

「嫌って言ってるよ?」
「駄目だ。どうせ他の人間に余計なことを言うに決まっている」
「オレ絶対言わねぇって!!」

何を言っちゃ駄目なのか正直全然わかってねぇけど、とにかく訴えるしかねぇな。
にしてもこいつ危なすぎる。MZDとはえらい違いだぜ。

「信用出来ない。お前の軽薄さはにしっかりと聞いている」

ちゃん、オレのことをこいつに話してるのか。
んで、この態度か。てことは、ヤバイぐらいにオレの評価低いな。

ちゃんはどう思う?こいつじゃなくて、ちゃんの思ってることが聞きたい」

ちゃんは黒神に従順って聞いてるから、これは正直賭けだ。
少しでもちゃんがオレを信じてくれるなら、オレの勝ち。

「……私は、信用していいと思う」
!お前はすぐに他人を信用して」
「だ、だって……」
ちゃんは、信用してくれるんだな!」

うっしゃ。ちゃんサンキュー!
黒神が悔しそうにしてるぜ。ざまぁ。
どーよ、黒神!
ちゃんが信用するつったのに、お前はどーするよ。

「……。もし他人に広く知られれば、お前は更に排斥されるぞ」
「大丈夫。その時は人間の世界とサヨナラするから」

あら?……もしかしてだけど、重い話?
もし、オレが口滑らせたら、とんでもないことが起きるわけ?
記憶消された方が楽だったか?

いや。ここで信用を得る方が結局はプラスだ。
黙ってりゃいいんだ。簡単な話じゃねぇか。
何を黙ってりゃいいかまだわかってねぇけど。

「……なら、に任せる。よく考えるんだぞ」

黒神はスッとどこかへ消えた。

あーーーーーつかれたーーーー。
アイツ面倒くせーーー。
超だりーーーーーーーー。
オレアイツ嫌いだわーー。

「ニッキー、あの……さっきはありがと」

MZDの時にも見た、あの柔和な笑顔。
それがオレに、今はオレだけに向けられている。
やっぱ、オレの選択は大当たりだったぜ。すっげー可愛い。

「色々とごめんね。黒ちゃん心配性だから」
「あぁ、ダイジョブダイジョブ」

心配性っつーか、過保護っつーか。
ちゃんのことが好きでしょうがないって、親馬鹿みたいな感じ。
面倒くせぇ奴。ちゃんの自由にさせときゃいいのに。
これだから大人は。

「どう?オレのこと見直した?流石にもう嫌いではなくなったんじゃない?」
「……別に、最初から嫌いじゃなかったよ」
「あんなに逃げたり、びびったりしてたのにか!?」

それは意外だった。ちゃんはオレのこと嫌いだとばかり。

「だって、私を怖がらないで話しかけてくれるから。ただ、迫ってくるのは怖い」
「そうか!!嫌よ嫌よも好きのうちだったんだな!!」
「だからそれが怖いんだってば!」

やっべー、うれしー。
なんだ、ちゃんオレのこと、そっか、流石オレ様。
きっと溢れるカリスマ性が女子のハートをガッチリ掴んでんだな。
くー、ハーレムの完成も近いぜ!

「あと、さっきの秘密にして欲しいことだけど」
「ん、何?よくわかってねぇんだけど」
「……んー、黒ちゃんが好きにしていいって言ってたし」

そう言って、ちゃんは声を潜めた。

「私、黒ちゃんやMZDと同じ力が使えるの。自分の思った通りになる力。
 それでさっきも、ニッキーが怪我しないように、ちょっと使ったの」
「てことは、女子の制服を脱がすことも、バレずに覗くことも出来るのか!」
「やっぱり、黒ちゃんに頼んで記憶消してもらう……」
「アイツは呼ばないで!」

ちゃんが少しずつ逃げ始めた。
面倒くせぇけど、少し本音押さえとくか。

「じゃあ、なんかやってみてくんね?」
「わかった」

ちゃんがくるりと回ると、制服が私服へと変わる。
ひらひらとした、メルヘンチックな服装。可愛らしい女の子だ。
早着替えなんかじゃねぇ、何もないところで服が替わった。

「可愛いじゃん……。え、私服?」
「うん。お家ではこういうのなの」

くるりと回ると、さっきまで見ていた制服姿に瞬時に変わった。

「こんな感じで色々出来るんだ。まだ練習中なんだけどね」
「それって、本当になんでもできんの?」

ちゃんはこくりと頷く。

「例えばさ、物騒なことも?」
「うん」
「オレが何考えてるかも?」
「そういうのは出来ないように黒ちゃんに制御されてる」
「自分のおっぱい増やすことは?」
「酷い……」

あ、またちゃんが逃げ出した。
やべーやべー。欲望が漏れてる。

「でさ、それが秘密ってことは、他の奴等も知んねぇの?」
「うん。サユリたちには言ってない」
「じゃ、オレだけ?」

またこくりと頷くちゃん。

「うっしゃー!!」
「ど、どうしたの?」
「だって、オレしか知らないちゃんの秘密だぜ。嬉しいに決まってるじゃんYo!」
「……そっか」

あ、ちゃんが照れてる。
つかさっきから、今までとは違う反応ばっか……。

ちゃん」

手を握る。全然嫌がらない。きょとんとしてる。
マジ?本当に?
こんな抵抗を受けないって、超新鮮。
オレ妄想激しいけど、実際に女の子触るなんてねぇからな。
あっても、逃げられるか、罵倒されるか、蹴られるってーのに。
ちゃんは、そのいずれも違う。

「オレ、ちゃんのこと、好きかも」

単純に、可愛くて良い子だから。
あんま深い意味はない。ただ、近づいて損はない。ロリ枠として。

「私はちょっと苦手かな。嫌いではないよ」
「うっしゃぁあ!」

あまりの嬉しさに抱きつく。
細ぇし、いい匂いだし、でも肝心のおっぱいがねぇ!

「な、なな、何をなさるんですか!!」
「嫌いじゃねぇんだろ。好きってことじゃん」
「なんか違う!まだ抱きつかれるの怖い!」

思わずつんのめる。
腕の中にいたちゃんが忽然と消えたからだ。
少し離れた位置にちゃんは立っている。
多分、さっき言ってたMZDたちと同じ力ってやつを使ったんだろう。

「ったくよー。オレの何が怖いんだよ」
「迫ってくるとこ。落ち着きがないとこ」
「黒神やMZDにはあんな抱きつかれてるくせによく言うぜ」
「二人はそんな勢いないよ!それに優しいもん!」
「やってりゃ、慣れる!だから抱きつかせて!」
「怖いから無理!!」

とうとうちゃんが走り出した。
勿論のこと追いかけるオレ。
また曲がり角だ。今度は階段で転落なんてやめてくれよな。

曲がり終えた先にいるのは、………あー面倒くせ、サユリじゃねぇか。
あ、後ろにちゃんが隠れてる。

「嫌って言ってるのにニッキーが無理やり抱きついてくるの!」

あーあー、そんな風に言っちゃ、サユリが。




「ニッキーの嘘つき!さんに近寄らないで!!」






まぁ、そんなこんなで、オレはしばらくちゃんに会うことを禁じられた。
勿論そんなの聞いてやんね、と思ってたんだけど。

「ごめんなさい。しばらくはお相手したくありません」

なんてことを、ちゃん本人が言うもんだから、少し心が折れた。
ちゃん、口は悪くねぇけど、意外ときついこと言うのね。
敬語だから余計ぐさっときた。
だから、仕方なくオレはしばらくちゃんへの突撃を止めることにした。
でも見てろ。
またすぐ、突撃してやっからな。待ってろよ、ちゃん!





(12/05/21)