アルビレオとポップンパーティー

私の経営するレストランは大赤字だった。

白い霧が立ち込める深い森の奥に立てられたレストランなんて、なかなか足を運ばれない。
しかも、月が空に輝けば霧が濃くなり、入る者を迷わせる。
レストランに到達するには、月のない日ではないといけないのだ。

このように、私の店はなかなか訪れられないような条件が揃っている。
店を開いてもお客は来ない。そんな日が続いた。
アルビレオに「ごめんね」と謝ると、「御主人様といられるなら、それで幸せです」と返される。
私はこの子の優しさが嬉しくはあったが、身を切るように辛かった。
猫の手まで借りているのに、実際は全く忙しくないのだ。
念願であった自分の店を持てたのに……。



ある日、アルビレオが神様が開催すると言うポップンパーティーへ行った。
私を残して。彼は一人で行ったのだ。
どうしたのかと思った。彼は私を嫌になってしまったのだろうかと。
私は不安でたまらなかった。
いても立ってもいられず、森へ飛び出し彼の名を呼んだ。

その日は満月。よりにもよって白い霧が一番深くなる日。
すぐ目の前や、足元さえも見えない。
うっそうと茂る木々たちは私の侵入を拒み、足を引っ掛けた。
土たちは、柔らかな身体で私を包み飲み込んでいく。


混乱した私は、この場にいない彼の名を叫んだ。






・・

・・・





…   …  ………






「よっ!来てやったぞー」
「いらっしゃいませ。MZD様」
「いらっしゃいませ。どうぞこちらで御座います」

けらけらと笑うのはこの世界の神と称する少年。

「今客オレだけだろー。もっと軽い感じでいいんだぜ?」
「いえ、一歩ここへ入れば、誰もが平等にお客様。私達は従業員で御座います」
「かってー頭してんな。好きだぜ、のそういうとこ」


森に呑まれそうになる私を助けたのはアルビレオ。それとMZD。
帰宅途中であったアルビレオは私の声に一早く気付き、MZDが救助に助力してくれたと聞いている。


「アルビレオ、どうだ、店の様子は」
「ええ。御陰様で、大変繁盛しております」
「飯は上手いし、サービスも良いし、おまけに雰囲気は抜群。
 そりゃ一度でもこの店に入れば、誰もがファンになる」



助けられてすぐ、何故ポップンパーティーへ行ったのかと愛猫に尋ねた。
アルビレオは答えた。


──僕が出れば、この店を紹介することが出来ると思ったからです。


アルビレオが願ったとおり、私の店はまたたくまに人々に認知され、
月が消えた日には必ずお客様がいらっしゃるようになった。


──不安にさせてごめんなさい。僕は御主人様のお役に立ちたかったんです。


私は、不安になった自分を恥じた。
彼はいつも変わらない。
にこにこ笑って、私のことを考えてくれる。






「この店のもう一つのいいところはさ、とアルビレオが通じ合ってることだ。
 二人が仲睦まじく働いてるのを見ているとさ、こっちまで幸せになってくるんだ」




fin. (12/11/30)