静かな夜だった。
周囲では酒盛りの声が奇跡的になく、アカヒゲの部屋には主と独神がいた。
「あ。あの」
白衣のみを肩にかけた独神がアカヒゲに言いづらそうに、しかし心を定めて言った。
「アカヒゲは診察多いから、きっと私の胸見たって何とも思ってないんでしょ?」
「(思うが)」
「だからね。あの。お、お尻使って良いから! こっちなら早々ないだろうし、そ、それにちゃんと処理もしたから!! 」
「どうやって」
その問いは真剣なもので独神はたじろいだ。
「え……。ふ、ふつうに……?」
「普通にって? 肛門への行為は清潔な状態で行ったんだろうな。手順は? 器具は?」
「え? え?」
「見せてみろ」
独神は蒲団の上で四つん這いさせられ、臀部突き出させた。
普段は誰の目にも触れられぬ恥部を広げられ、まじまじと診察された。
「異常がないか確かめるぞ。待ってろ」
「あ。はい(職業病出ちゃった)」
部屋を出たアカヒゲは暫くして、手ぶらで帰ってきた。
夜の肌寒さに当たって冷静になったのかアカヒゲは独神に頭を下げた。
「そういうことじゃないよな。どうかしてた」
気にしてないよと、独神は蒲団の中で温まりながら言った。
「だがもう自分でするな。やる時はおれが全部やってやる」
「へ!? そっちの方が恥ずかしい」
「そんなこと言ってる場合か。肛門は出して入れて遊んでいい穴じゃないんだぞ。だったら専門家に任せてからやれ」
「あ。はい(するのはアリなんだ……)」
情欲はすっかり冷めきっていた独神であったが、いざ事が始まると再び溢れる出てくる欲に身を任せた。
結局後ろの穴は使わずじまいだった。
(2022/12/23)