チャンスは逃さない

 ヌラリヒョンは歳のせいか、ぐいぐいはこない。
 タイミングを逃さず、滑り込んでくる。
 
 苦しい時、誰かにすがりたい時、落ち込む時、
 そんな時に相手に負担をかけないように、現れる。
 
「ヌラリヒョンだが。主、良いかな入っても」
「どうぞ」
 
「身体に障る。そろそろ休んだらどうだ」
「もう少しで考えがまとまりそうなの。だから、もう少しだけ」
「なら、茶でも淹れてこよう」
 
「主よ、少し失礼するぞ。……っあちち」
 机に置こうとして、熱がる。
「ヌラリヒョン大丈夫?」
「やっとこちらを向いてくれたな」
 隣にいる。ばつが悪そうにする独神。
「この老いぼれに少しだけ、付き合ってもらえないかな」
 そしてお茶を飲む二人。
「熱いから気を付けるのだぞ。儂が言うのもなんだがな」
「いえ。ご忠告ありがとうございます」
 黙っているが、
「……今回、私の読みの浅さが被害の原因でした。
 みんなには、本当に申し訳ないことをしました」
「ああ」
「反省はしても、引きずらない。……判ってはいても、後悔ばかりがぶり返して。
 そのせいで、身が入らないなんて、本末転倒なんですけど。
 ……自分の未熟さが嘆かわしいです」
「そうか」
 また黙る。
「……ありがとう。あなたに聞いてもらって、気持ちが落ち着いてきた。
 もう大丈夫。あなたが淹れてくれたお茶を飲んだらすぐ寝られそう」
「ははっ、儂は何もしておらぬよ。主が自分で杞憂を払いのけただけさ」
 
 
「儂にも主に聞いて欲しい事があってな」
「勿論。どうぞ」
「最近歳のせいか、寝つきが悪くてな……。手足が冷えておるのが原因だと思うんだが」
「あらあら、それは大変」
 手をとる独神。
「……私とあまり変わらないみたい。温めてあげられたらと思ったのに」
「いや、出来るさ」
 抱きしめる。
「……あ、の。ヌラリヒョン。流石にちょっと私もびっくりしちゃう」
「主、思いつめるでないぞ」
 耳元に響く声。
「戦の流れは水の如し。采配だけが結果を導くものでは無いのだからな」
「……けれど。んっ」
 強く抱きすくめられる。
「今回経験は負傷と引き換えに兵各々が糧を得た。兵は采配だけでは守れぬ。兵自身の力と知恵が兵自身を守るのだ」
「……あの……」
「どうした主、随分苦しそうだが」
「……緩めて」
「そうだな……。主が冷静になったら緩めてやっても良いぞ」
 
「……優しすぎて、困っちゃうよ」
 
「おやすみなさい」
 
 
  *抱きしめるまではやり過ぎだと思った。
  (こういう系あほほど書いとる。なんぼでも書ける。性癖)


自本殿ぬら(会ったばかりの)

 ヌラリヒョンが仲間になった。
 御伽番になった。
 最初は大体そこから。
 お互いに知る為だったり、独神の傍に居れば他の英傑と会う事が多いからだ。

 なんだかにこにこしているというか、柔らかい雰囲気。
 でも、なんだか踏み込めない。
 あとからかってくるのも、反応に困ったりする。

「御伽番は夕餉までなの。あとは自由だから、お部屋でゆっくりとお休み下さい」
「それはありがたい。しかし……儂は妖でな、これからが楽しい時間だ」
「あの、外出も自由だから。……ああ、でも、辻斬りには気を付けて」
「ほう。……なるほど」
 で、独神は変わらず仕事をする。ヌラリヒョンは何故かいる。

「……どうかした?」
「ん?もう少しいたいのだが、お邪魔かな」
「邪魔ではないけれど、訪ねる者もいないのであまり楽しいものでもないわ」
「主がいるではないか」
「それで良いのなら。……お茶を淹れてくるね」
「すまぬなあ」

 作業してるけれど、ヌラリヒョンはまだいる。
 特に構ってないけれど、気にしていないらしい。
 見られてる、なんだか観察されている気がする。
 とりあえず切り上げて。

「おや、終わりかな」
「ええ。あの……少しお付き合いして頂いても?」
「ああ、勿論」

 少し酒を飲む。お酌する独神。
 そして、がっつり飲む独神。
 酔ってきてから、勢いづけて言った。

「あの!何か至らない点があったでしょうか!
 ヌラリヒョン様から見て若輩者の私は、英傑をまとめるには拙くお遊戯のようでしょう。
 だから、あなたの教えを請いたい。どうかご指導をお願いできないでしょうか。
 頭を下げる。と、笑われる。
「ははっ。主は真面目だな」
「……独神殿、頭を上げるが良い」
 あげる。
「儂は今日一日其方の働きを見た。其方を主と慕う者達を見た。
 三種族が混じりあい、一つの場所で生活を共にする。
 普通なら考えられぬことだ。既に上に立つ器量を持っておる主に儂からの助言はいらぬさ」
「有難いお言葉ですが、私は未熟である自覚があります。
 学べるものは学び、明日は今日以上に精進した自分でありたいと存じます」
「真っ直ぐなのは良いが、そうそう部下に頭を下げるものでもないよ」
「いいえ。私は英傑の力をお借りしているだけで、主従ではありません」
「年寄りの儂よりお堅いなあ、主は」
 撫でられる。
「それが其方の良さ、なのかもしれぬな。まだ付き合いも浅く其方を判っておらぬが」
「主、」



理性を失ったヌラもよい

 妖の血のせいで、軽く理性を失ったヌラに襲われる。
 ある程度理性が戻った時に、ヌラは自分を切るように言うが、独神は拒否する。
「何をするか判らぬ」
「良いよ。それで良い」
 結局受け止めるが、傷が残る。
 その責任をとって、ヌラは本殿を去る。
 以前のように東北で陣取り、守ったり、戦ったり。

 そして平和になった後。
 ヌラの館に忍び込む。

「この傷、もう治らないそうよ。だから、この傷の責任をとって頂戴」
「主の思うものとは違うだろうが、儂のやり方で責任をとろう、この生涯全てをかけて」
「……ええ」

(軽率に責任をとらせたくなる。傷つけてもらいたくなる)


悲恋ヌラ

 女子会ではじまる。
 独神が珍しく参加。
 酒飲んで、泣きながら、ヌラを好きな事を辞めると宣言。
 理由は独神業に差し支えるから。自分の役割と感情の狭間に自分が耐えられなかったから。

 やめる前に、ヌラと出かける。めかしこんで。
 その時の服はタマモにアドバイスを貰いに行った。
 決めてくれなくて良い。自分で決めたいから。でもアドバイス下さい。という体。
 なぜわらわに、と聞くと、自分の中で一番女らしいと思うのがタマモゴゼンだからと言うと、タマモは快く引き受けてくれた。
 そして、自分で選んだ服と装飾で出かけて、自分の考えを伝え、恋を終わりにした。

 平和になった後がある、と言われるが、それは出来ないと独神。
 八百万界は必ず救うけれど、今の事で手いっぱいで未来の事を考えられない。
 やらなきゃいけない事がたくさんあると。
 わざわざ言わなくても、と言うと、どうなるか判らない私の事でヌラを縛りたくないと。
 あのじーさんがそんなほいほい誰かを気に入るかね?と思う者もいる。
 独神もそうかもしれないけど、自分の中でけじめをつけたかった。と。
 今日だけは沢山泣いて愚痴って、明日からは八百万界の事だけを考えると。

 危うくも見える。かわいそうにも思う。
 でも、この方が独神が楽だというなら、それでいいと。
 みんな一緒に付き合って、その後ヌラに何かを言う事はない。
 二人の事だから口を出さない。

(独神とヌラ。大人の関係が好きです。己の感情よりも他に大切にすべきものがあるという。そのせいで何年も引きずるの好き。心にずっとひっかかりを感じているが、もうどうにもならない。そんな救いようがない現実みたいな話好き)


モモチもでる

 誘われる。話があると。
 夜に部屋に行ってみると、普通の雑談。
 良いことがあったからと、酒を勧められ、二人してちびちびのむ。
 昔話をする。
「てっきり、何かあったのかと思ったわ。あなたからの話なんて、もし相談事だったら?私で解決できるようなことかしら?って随分ここに来る前に緊張したのよ」
「それはすまなかった」
「あなたが私を呼ぶことはないから、心配したの」
 そしてすまなかったなといってまた飲む。
 独神はそのまま寝る。
「……ふむ、ヒトリガミと言う割には神のように酒に強くはないのだな。すまないことをした」
「部屋に運ぶ所を見られれば面倒だ。このまま寝かせておくか」
 そのまま朝。早朝。
「……きたか」
「主殿が何故ここにいる」
「爺の長話を子守歌に眠ってしまったのだよ。そう警戒することはない」
「飲ませたのか」
「付き合ってくれたのだが、まぁあまり強くはなかったな。それよりも、報告があったのだろう。主は潰れておるから儂が代わりに聞こう」
「その必要はない」
 起こす。
「……モモチタンバ?……ヌラリヒョンのにおいがする……」
 寝る。
「其方の主殿に報告できそうか?」
「……致し方あるまい」
 その後部屋に運んで御伽番だからと、代わりを務める。
 一部周りは嫌な感じがしていた。
 まるで独神を支配しているように見えて。

「寝すぎた!?ごめんなさい!」
 周囲の英傑にはしっかりしろよと言われつつ。
「迷惑かけたわ。ごめんなさい」とヌラリヒョンに謝る。
「構わぬさ。よく眠れたかな」
「おかげさまで。最近ずっと眠れなかったけれど今はすっきり。ありがとう」
「主が元気なら爺は満足さ。ははっ」

(ヌラとモモチは互いに警戒し合っている関係が好き)


ぬら(ちょいえろ)

 今日はありがとう、助かったわ

 主、この後は空いているかな
 ええ。大丈夫よ


 一緒にいる。少しお酒を飲む。
 ふらっとするとヌラが支えてくれる。

 少し飲ませ過ぎたか
 ついね。話が止まらなくて。

 寝所へ連れて行く。
 寝かそうとしたが離れてくれない。

 主?
 ののしって。ばかなわたしをばとうしてちょうだい。

 作戦ミス。調停ミス。被害が大きくなって。

 罵るなんて下品な事は出来んが、少し良いようにさせてもらおうか。

 体に触る。舐められる。服ごしに触られる。

(バレそうなので先に言いますが、お仕置き系無理やり系好きです。……以上)


死して

 ヌラリと付き合っている独神。

 独神が瀕死の状態に。
 だが今は最後の戦いの真っ最中。独神が瀕死であるなんてバレたら作戦が失敗する。

 ヌラが何やら物を渡した、偽物として使えると。
 今までずっと独神が身に付けていて、記憶が残っていると。
 それを使うと、精巧な偽物が出来た。
 その代わりに、ヌラの記憶から独神がいなくなった。
 そういう術だった。


 ???
 とにかく、付き合ったヌラから独神の記憶が消え、
 他の人たちの中には残っていて。
 独神の本心、本質を知ったヌラリヒョンだけが、忘れてしまった。
 一番愛を受けた者が忘れてしまった。
 という、他のひとから見れば、ざまみろと思われたり、かわいそうとおもわれたり。

 独神は死んだ。死体も残らず。塵になった。

 ぬらは全く覚えていない。
 ただ、ぬらはいろいろと残していて、
「まるで若造のようで……こそばゆい気持ちになるな」
 自分のことなのに判らない。まるで自分ではないみたいな、青臭い思い出の品たち。
「儂がここまで狂わされるほどの者だったのだろうか。確かに皆に慕われているようではあったが…。

「……まさか、揃いの服に仕立てたなんてことはありえぬだろう。
 ……ありえるようだな。儂は何を考えていたのやら。己のことながら気色が悪いな。
 打算ならわかるが……多分、今までのを見る限り、そうではないのだろうな。

「……会ってみたいものだ。その、独神とやらに。年老いた爺を狂わせた者を、我が目で見てみたい。


「……記憶のある儂は挑発的だな。腹を立てているのはどうすることも出来ない自分自身にか。
「……独神が消え、独神を愛した儂が消え……。二人は永遠になったのだ。考えようによってはな。……と、また儂らしくない事を考えてしまった。

(死して完結する関係は最高)


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