スクナヒコ

 酒宴になり、主はがっつり酔う。
 笑い上戸。
 でも、理性が無くなる前には退室。
 その際に、毎度誰かに肩を貸してもらう。
 だから、周りも出来るだけ近くにいようとする。
 指名されるために。
 だもんで、スクナヒコはいつもなら他の奴らに酒を勧めるが、
 主にはあまり勧めない。「飲み方には気をつけろよ」と一言添える。
 背の小さい自分は肩を貸す事が出来ないので。


イッスン

 イッスンボウシ。
 大き目の服を捨てた。
 いつか、これくらいになると思っていたのだ。
 すぐに大きくなるなら、少し大きめの服にしておいた方が良いと思ったのだ。
 だが、イッスンボウシの身長はすぐに止まる。大きくならなかった。
 希望を捨てきれなかったが、この度諦めがついて捨てた。
 でも、その事ばかり考えている。
 で、もう一回取りに行った。
 なかった。
 それをオツウが拾っていて、良い大きさだからと仕立て直そうとしていた。
 良い布が使われている。

(背が低いこと、成長しないことを、本人は本気で悩んで苦しんでいるのってありますよね。そういう話。最終的に救われる話になるはずだった。これはまだ一週間に一度、七つの小話を投稿していた時期のボツネタ)


マサカドサマ

「なんだ。用があるのなら、命令すれば良かろう」
「いえ。用はないの。あなたのお蔭で雑事は殆ど片付いてしまったよ」
「この程度で終いか」

 肩透かしを食らったようで。

「やはり戦場で敵を斬り捨てる方が性に合う」

「手が空いたのだろう。なら、俺の相手でもしてもらおうか」
「そうね。何がお望み?」
「……いや、後にしておこう
「でもさっき……?
「まだ来訪者がいるようでな。
 じっと見ていると、出てくるモモチ。
「あら、お帰りなさい。今日は早いのね」
「定刻でなくて申し訳ない、主殿」
「謝る事ではないよ。あなたはいつも、私が求める情報を持ってきてくれているのだから」
 話を聞いて、下がる。
 何故か、楽しそうなマサカド。
「随分上機嫌ね」
「ああ、少し面白いものを見られたからな」
「不思議な人ね」

(モモチ→独神。マサカドサマがどのように独神に接するのか見るつもりだったが破られた。モモチはラオウと一緒で最終的に自分の元にいればいい派。だから自分が攻める時に何が効果的かを他の英傑を利用して情報を集めている。だがマサカドサマには看破されていたらしい)


マサカドサマ(ちょいえろ)

 傷に触れさせる。舐めさせる。
 独神を触る事はしない。
 触ると、独神が警戒するから。
 それに、自分から触る事は誰にでもできる。
 だから、自分を触らせた。直接性的な事ではないことで。

 そうすれば、他の者より優位に立てる。
 抜け駆けとも言えない。触ってきたのは独神、というスタンスが取れるから。

 独神は、己が英傑たちと性的に交わらなければならないと、聞かされて、動揺していた。
 そんな時を狙った。
 普段の冷静な時であれば断られていただろうが、動揺した時であれば、ある程度押せると思った。

(血の交わりで強くなるなら、英傑と交わった分だけ(遺伝子を取り入れた分だけ)独神パワーが強くなるという設定がこの時期のマイブーム。ただ乱交設定すぎてファンに刺されそうだと思ってお蔵入り)

(マサカドサマは頭が良いので、攻め時を逃さない方だと思う)


シュテンドウジ

 シューちゃん、でいいんだぜ。
 なら、お言葉に甘えて、そう呼ばせてもらうね。
 シュテンドウジ
 がっくり。とする。
「おいおい、そうじゃねぇだろ」
 にこにことする独神。
「ほんと、つれねぇよな……」

(ガタイの良い怖そうな男が、ガクッと肩を落とす姿ってめちゃ可愛いと思った)


ロキ(せくはら表現あり)

 ロキがドクシンになれてきた。
 そして、からかうつもりで、後ろから抱きしめようとして、失敗。
 思い切り胸を掴んでしまう。
 普段と違い、無防備に嬌声をあげてしまう独神。
 その時は反省したロキだが、独神の反応が楽しくて、その日から何度もしてしまう。

 周囲が

 ロキは他所の世界の者なので、どうしても、独神に対して馴れ馴れしい。
 神格化していないので、遠慮がない。

 そんなロキのせいで、独神の威厳もなくなる。
 そして、他の皆も、独神に対しての好意が暴走しやすくなる。

(神聖化していた「独神」が、余所者に犯され威厳を失う話)


ロキ(せくはら表現あり)

 ロキがきた。

 慣れていないロキと同室で寝てみたり。
 勿論、忍が隠れているわけだが。

「私は、あなたのことを知らない」
「だから、自分に置き換えて考えてみたの。もしも自分が八百万界から離れて、全く別の世界へ行ったら。
 きっと心細くて、誰かにいて欲しいと思うだろうな、って」

「おれも、ドクシンサンのことは知らねぇ。ならセックスでもしてみる?
「……とは?どういう事」
「え?わかんねぇの?こう……二人だったりそれ以上が、あーでこーでだな」
「…………もう寝なさい」
 意味が判って恥ずかしくなった独神。
「なになに?ドクシンサンこういうの駄目なわけ?」
 楽しそうなロキ。
「いいから寝なさい」
「へへっ、弱点見ーっけ。じゃあドクシンサンって──」
 ざくざくっと、飛んでくる。
「なんだよ。危ねぇな」



 で、こんな面倒な事に付き合ってくれた忍だが、一応、独神からの交換条件。
 フウマコタロウは、独神と同室で寝る事を希望。
 すんなりと了承される。
「(信用していると見るか。それとも、……そう思われていないかだよね。きっと後者だろうな)」


 独神は調子を崩してしまうが、それを見かねてヌラリヒョンが動く。
 カグツチを御伽番にするようにする。

 独神はカグツチに尋ねてみた。
「抱きしめてみたい」
「は?オレが何の神か判ってんのか?」
「大丈夫。火傷しないから」
 結局やらせてくれる。
 カグツチは必死に火を抑えている。
「ま、まだかよ……」
「……もう少し」

 近づく事で、触れる事で判る事。
 感触や匂い。
 擦り寄ると震える身体。
 息遣いが聞える。耐え忍んでいる。
 温かい身体。人の感触。肌が擦れ合うの感触。
 ずっとこのままでいたいと思った。気持ちが良い。

 堪能したら放す。終わったら、炎が出てくるカグツチ。
「っはぁ!疲れたぞ!もう二度とすんなよ!」
 ぷんすこカグツチ。
「ありがとう。無理を言ってごめんね」
「そうだぞコラ!偶々オレが抑えられたものをオマエは」
「偶々じゃないよ」

「あなたの火はとても気持ちいい」


「火は浄化の力もあるのよ」
「雑念が吹っ切れた。あなたのお蔭よ、ありがとう」
「うっせーな。もう判ったよ」

 それから、ロキに何かされても余裕をもって受け流せるようになる。
 胸を触られても、そっと外してしまう。

「ドクシンサンの弱点がまた見つかると良いね」
 と笑ってるくらいに。

(堕ちていく女も良いが、強い女も好きなのである。ロキ如きに揺らぎはしない。……の方が、ロキ→独神に持っていけると思った)


マサカドサマ

 戦いが終わった後。
 平和な世界になって、独神は姿をくらました。
 祝宴を開いて、がやがや騒いで。
 いつもはお酒をほとんど飲まない独神が浴びるように飲んで、酔って倒れる位に。
 誰彼かまわずべたべたして、抱き付いたり、口づけたり、あーやっと平和になったんだ、とみんなが噛みしめていた。
 それなのに、忽然と独神は消えた。
 置手紙には醜態を晒して恥ずかしいから、と書いてあったけれども。
 それを信じる者もいれば、策だと思う者もいる。
 そして、みんな全国に散っていた。
 独神と会う前の自分たちの生活に戻っていく。


 独神はふらふらとしていて、山奥。
 水浴びしていると、誰かに見つかってしまう。
 顔を見せなければ殺すと言われ。その声には聞き覚えがあった。
 だから振り向きたくは無かったのだが、切られるわけにもいかないので、振り向いた。
「やはり、主だったか」
 独神がいたのは遠野の山奥。
 最近怪しい奴がいると、報告があって、ヌラリヒョンがやってきたのであった。
「しばらくぶり、だね」
「もう何十年も会うておらぬように思うたぞ」
「あの。服、取ってもいいかな」
「良い。儂が持ってこよう」

「独神ともあろう者がどうした」
「平和な世に、独神は過ぎた存在だからね」

「木の根以外のご飯なんて久しぶり!」
「……主は、なかなか、どうして。いや、遠慮なく食べると良い」


 離れを貸してくれた。

「お世話になるわけには」
「この老いらくの為だと思って、世話をさせてくれんか」
「歳って言う割には、若々しいと思うけれど」
「ははっ。まあまあ。では、頼んだぞ」
 消える。
「……あ!まだ、了承してないけれども!ヌラリヒョン!」


 衣食住の世話をしてもらう。何日間か。
 そして、独神は旅に出る。
 八百万界を見る為に。別れた英傑たちの様子を窺いに。

「いってきます」
「何かあれば文を寄越すと良い。百鬼夜行ですぐに其方の元へ行こう」
「……もしもの時はお願いするね」
「気を付けるのだぞ」



 そして、色々回る。ダイダラボッチに会って、山で過ごしたり。
 ダイダラボッチは独神にいて欲しいと思うが、持ち前の天邪鬼で正しく自分の想いを告げることは出来ず。

 ダイダラボッチに運ばれて海を渡ったり、途中でシラヌイに会ったり。
 出雲にいって、オオクニヌシとスクナヒコに会ったり。

 民衆の争いにも出くわす。
 状況を見て、手を貸す。独神だとは明かさずに。
 相手の将を垣間見ると、まさかのマサカド。
 見つかるとまずい、と、独神はひっそりと逃げようとするが、そこで捕えられる。
 牢屋に入れられる。そこでマサカドと対面。
「貴様はもう、俺の将軍ではない。捕虜としてそのまま絶望するが良い」
 逆らうことなく、大人しく捕まっている。
 呼び出される。
 そして会話。その中で、独神である自分は世間から消えるべきだという独神の思いを聞かされる。
 そして、仕えるべき主を失った将の行き場のなさをマサカドから語られる。
「行き場を失った者は俺だけではない。戦いが無くなり存在意義を失うのは独神だけではない。つけあがるな」
「私を支持してくれた者達は多かった。もう八百万界に、そのような勢力は必要ない」
「流浪する兵を最後まで面倒を見るのもまた将軍の責務であるぞ」
「……。平行線ね」
「さっさと俺の言う事に頷けば良いのだ」
「それが出来てしまうのなら、独神の任を果たす事は出来なかった」



 話を重ねるうちに、独神は姿を消すことを止める事にした。
 自由に生きる事にした。そして、マサカドはそれを守護することにした。
 何があっても守り抜くと。
「胴だけになろうとも、将軍を守ってみせようぞ」
 誰の為でもなく、自分の好きに生きる事にした独神。
 そして、自分の為に独神を守る事にしたマサカド。

「ねえ。結婚する?」
「ああ」

 軽いやり取りで、結婚が決まる。祝言はあげない。
 大々的に連絡はしなかった。
 会うたびに、マサカドが夫であり、独神がマサカドの妻だと言っていた。
 そして勝手に広まる。
 悔しいやら嬉しいやら。で、気持ちに区切りをつける為にも、二人には祝言をあげてもらう。
 色んな者達が集まる。悔しいもの、泣いているもの、喜ぶもの。
 策が失敗して残念がるもの。
「主は最後には遠野に戻ってくる、そう思っていたが、やれやれ、他の英傑を軽んじていたことが敗因かな」
「謀にも長けた将軍を追い詰めたいのなら、感情に訴えるべきだったな。
 あれは、頭でっかちのけがある。理屈を用意するより、一時の感情で押し流す方が容易い」


(平和後姿を消す独神がマイブームだったらしい。ヌラを出しておきながらマサカドサマ落ちという珍しいパターン)


アシヤドウマン

「……ふう、占いでもお願いしようかしら」
 アシヤの元へ行く。
「アシヤドウマン。今、良いかしら」
「入ってくれて構わん」
 入る。占いをしていた。
 独神は邪魔にならないように、端で待っている。
「どうした。俺に用があったのだろう」
「えぇ、次の討伐で英傑の配置に悩んでいて、占いを、お願いしようと」
「判った」
 すぐにしてくれる。
「……播磨か。なら東からだ」
「東ね。ありがとう。所で、よく播磨だって判ったわね」
「そう出ていたからな」
 なんだか少しそっけない気がするが、独神は改めて礼を言って退室。

「主人、これをやろう」
「あら、綺麗な簪ね。……本当に貰っていいの?」
「変な事を言う。主人の為に贈ったものなんだぞ。素直に受け取ると良い」
「ありがとう。……少し待ってて」
 手鏡を使って結う。途中アシヤドウマンが鏡を持ってくれた。
「どうかな」
「やはり俺の目に狂いは無い。よく似合っている」


 ※鼈甲の簪( 一本の細い棒に呪力が宿ると信じられていて、それを髪に挿すことで、魔を払うことができる(魔除け))

 独神は普段は付けないが、何かあればつけた。
 普段つけないのは、壊してしまいそうな事と、壊されてしまいそうだからだ(他の英傑)

 簪には呪術が練り込まれており、どこにいるかわかるようになっている(GPSみたいなもん)
 だからさらわれたとしても、アシヤドウマンの式神を追えば、独神の元へ行く事が出来る。
 多分、さらわれても、結局は壊されると思う。敵の方も何かへんだと気付いて。
 そして見つけてもらって、傷だらけのまま救出されて、本殿へ帰って。
「……ごめんなさい。簪、壊してしまって……」
 意識もろくに戻らないのに、謝罪だけはする。
 それが痛々しかった。


アシヤや国造組やら

「主人、唐突で悪いが結婚してくれ」
「……あらあら」

 御伽番のスクナヒコが酒瓶を投げた。

「お頭、酔っぱらいの相手したって不毛だぜ」
「年中酒を食らう貴様の事か?」

 アシヤドウマンが誰かを連れてきた。
 聞いてみると、仕立て屋。
 和装とは違う自分のデザイン。
 そんな自分の服を誰かに着てもらいたい。
 どうせ着てもらうなら理想の人が良い。似合う人。
 それで宣伝になる人が良い。
 偶然会ったアシヤドウマンに一目ぼれし、着てもらいたいと思った。
 だが、ドウマンは条件を出した
 花嫁は選ばせろ、と。

「と言う事だ」
「ふうん。ま、そいつの熱意は判ったよ。物作りは、オレも一応経験があるしな。
 ──だが、お頭が相手役を務める事は話は別だろ」
「主人、民の願いを叶えてやってはどうか」
「聞けよ!つか、アンタ普段死屍累々とかドヤって言ってんだろうが!
 お頭、びしっと返してやれ!」
「……そうね」
 全員黙る。
「形だけ、で良いのなら、御受けしましょう」
「あ、ありがとうございます」
 平伏す。
「アシヤドウマンさん!では私の工房で合わせてみましょう!
 独神様、後日衣装をお持ちします。その時に合わせてみても宜しいでしょうか?」
「ええ、お待ちしております」
「重ね重ね有難う御座います。今日はこれで、失礼します!ドウマンさん行きましょう!」
 去っていく。
「……けっ、面白くねぇ」
 酒を食らう。
「まあまあ、そう言わないで」
「お頭の嫁入り衣装なんて、絶対見てやんねぇからな」
「それでいいと思うよ。見られるかも怪しいから」
「は?」
「気にしないで。一杯どうぞ」
 酌をする。飲む。


 当日。花嫁衣裳を着る独神。
 御伽番はスクナヒコではなくなっていた。
 オオクニヌシになっている。
「なかなか意匠を凝らしているな。良い作品を見ると良い刺激になる」
「……隣に立つ者には異論しかないが」
「主君、後でスクナヒコの元へ行ってやってくれよ」
「ええ、潰れる前には行くつもりよ」
「既に結構出来上がっているんだがな」

「将軍、戻ったぞ」
「おかえりなさい。怪我は無い?」
 ……なマサカド。
「俺に嫁ぐ気になったのか?すまない、気づかなかった。であれば、祝いにパズスの首でもとって参ろう」
「違うのよ。仕立て屋の宣伝で着ているの」
「独神ちゃーん、終わったから褒めてーって、それって新しい白無垢?独神ちゃんの悪戯ってほんと可愛いよねー、式はいつにする?」
「宣伝で着ているだけよ」
「……ここの奴らは自分に都合の良い考えしか出来ないのか」
 呆れるオオクニヌシ。
「オオクニヌシ、向こうへ行ってこちらには来ないように言ってもらえる?
 血の雨で衣装が汚れる事は避けたいの」
「ああ……気分は乗らないが承知した」

「来るなと、主君からの伝言だ」
「主人はなかなか初心だな。それが良い」
「……今行けば切られるぞ。厄介な者が来ているからな」
「面倒な者しかいまい。主人もさっさと袖にしてしまえば良いものを」
「されるのは君も同じだ」
「関係ない。それでも手に入れる」
 で、出る。
「(熱意は認めるが、それまでだ。オレは主君と相方と囲む事が楽しいからな)」

 戻ると、どんどん人が増えていて、しっちゃかめっちゃかに。

「宣伝で着ているの!だからなんでもないの!」
「アシヤドウマン……今から呪って差し上げますわ」
「タキヤシャヒメ、呪いは勘弁してあげて」
「なら、犬を遣わせますわ。可愛い犬を、沢山」
「御慈悲を……」





 恋人でもないので、なんだかアシヤドウマンと独神は慌ただしく、落ち着いていない。
 あと、周りがなんだか殺気立っている。

 見た目は美しいのに、周りの人だって綺麗だと言う。
 でも、何かが違う。自分がしたかったのは、こう言う事だろうか? 仕立て屋は自問自答。


「気持ちがないと、人の心は動かないでしょう?」
 独神はこうなるだろうと思っていた。
 美しくとも、形だけのものでは人の心は動かないと。


(自本殿の短編で考えていたのだろう。国造組+独神の健全な関係好き。
 スクナ→独神←オオクニヌシ であっても、友人のような家族のような感じで。「性的に犯したい」という欲求よりも、ただ他愛のない時間をただただ過ごしたい)


アシヤとヌラ

 アシヤドウマンに突然花を贈られて、好きと言われてしまった独神。
 勿論嫌いではない。むしろ世話になっている分、好きな部類。
 ではあるが、突然の求愛に戸惑ってしまう。
 お断りなのだが、それはアシヤドウマンも理解している。
 だから、平和になった後に聞かせて欲しいと言う。
 今は独神の望みである、八百万界の平和を優先しよう、と。
 これも別に、独神の為ではなく、そう言えば独神がずっとアシヤドウマンを意識せざるを得ないと思ったからである。
 実際、目論見通り独神は断ることもずい出来ず、なんだか悶々とするのである。
 花は寝所の方へ飾っている。
 寝る前に毎度考えてしまうのである。
 意識しても仕方がないとも思う。が、むげには出来ないとも思う。

「主、随分と不用心だな」

 外を歩いていると、ヌラリヒョンに会った。
 というか、気配が無かったので本当に驚いた。
 息を飲んだくらい。

「辻斬りが出る。儂が部屋まで送ろう」

 辻斬りの正体は知っているが、黙っておいた。
 ヌラリヒョンも知っているように思うが、わざわざ教える必要はないと思う。

「花の香り、だな」

 どきっとする。遠まわしにアシヤドウマンの話題を出しているから。

「花。好きなの?」
「ああ、散歩中に目に留まるくらいには。だが偶には、珍しいものも見てみたいものだな」

 暗に示している。それは独神にも伝わっている。

「永く生きているあなたが珍しがる

「もし良ければ、あがっていきませんか」
 と、独神が言った。
「主のお言葉に甘えさせていただこう」

(誰にも落ちない話。ストレートに愛を伝えられるアシヤと伝えられないヌラリヒョン)


ビャッコ

 最近甘えてくる子が多い。
 戦闘の苛烈さのせいか。不安なのだろう。

「早く平和になって欲しいものね」

 もふもふビャッコを撫でながら。

「うむ。我々でさえ不安を抱いておるのじゃ。
 力のない民草には重すぎる」
「悪霊に見せかけた犯罪も増えているわ。悪霊と手を組む者も」
「先生。そう辛そうな顔をせんでくれ。我らの心は折れておらぬ。
 必ずや八百万界の平和を取り戻そうぞ」
「ふふ、ごめんなさい。私はもっとどーんと構えていないとね。」

(英傑も人間であるということ。ビャッコもふもふは最高だということ)


妖暴走の導入

 妖たちのみ、理性が保てなくなる。
 変だなと思って、妖同士で話して、独神から離れる。

 なんだか、最近見ない子が多いような。
 自由だから構わないのだけれど・・・。

 なんだか葱が減ったような気がする。
「ウカノミタマ、料理は最近あなた?
「そうだよ~。はっ、もしかして、主さまのお口に合わなかったの?」
「ううん、そんな事は絶対にないよ。ただどうなのかな、と思っただけなの」
「それならいいけど・・・。そういえば、最近ヤマオロシさん見ないなぁ」
「そうなんだ・・・」

 一人で部屋にこもってる。
 ここにいても、みんなの大きい声でよく聞こえたのに。
 特にヤマビコの声が大きいものだから、見なくても状況がわかっていた。
 ・・・それも聞かない。

 石畳、ハハキガミやクツツラ、イッタンモメンがよく掃除していた。
 だからいつ見てもきれいだった。
 あまり掃除をした形跡がない。
 どうしたのだろう。

 いや、どうしたのだろう、という段階ではない気がする。
 シュテンドウジやイバラキドウジも見ない。

「アマテラス。シュテンドウジ知らない?」
「シューくん?そういえば、最近見ない気が・・・」


(妖が本来の凶暴さを取り戻すお話。グロエロにしたかった。蹂躙され尊厳を損なわされようとも、果たして今までのように「好き」でい続けられるのか、独神さんは。という話
 だが、バンケツファンはそういうの嫌いっぽかったので書かなかった)


マサカドサマ

「ふん、こんなものを貰ったとて何かに
 希(こいねが)うことなどあるものか。
 ……しかし、そうだな。将軍の願いならば
 叶えてやってもいい。
 俺が叶えた願いならば、きっとその心に
 焼き付くであろう?望みはただひとつ。
 将軍よ、その身も心も、願いも……
 この俺のものだと誓ってくれ。
 他の者のことなど考えてくれるなよ。
 でないと……よく知っておいでだろうな?」


 身も心も全て欲しいというマサカド。
 どストレートな求愛にさすがの独神も流しきれない。

「あの……マサカド?」
「冗談ではないぞ。逃れられぬ」
「……」

 何を言って良いのかも分からない。


 みんなが見ている。気配を殺しているけれど、絶対に見ている。
 マサカドも判っている。だからこそ、言っている。

「私は八百万界を救う為ならば命を賭す。決意ではく、決定よ」
「未来のない私は、誰かと恋仲になるつもりはない」
「命を賭す、と言ったが、ならば何故八傑がベリアルと戦い、力を失う時に命を燃やさなかったのだ」
「あの時は初めて一血卍傑を行ったわ。それはある程度定まった事だった。
 まだ私には別の力もあるの。次に絶体絶命の危機に陥ったら……使うわ」
「ほう。なら良い。つまり、戦の状況によっては、その力、使わずに済むという訳か」
「え、ええ、まあ。そう、ね……」
「必定でない死ならば、誰と未来を築こうとも構わぬではないか」
「けれど、そんな確実性のない事」
「将軍よ。戦の最中、我ら英傑も命を落とす事はあるのだ。変わりあるまい」
「……」
「よって、俺が将軍の全てを所望し、且つ将軍が受け入れる事に何の問題もない」
「……え、ちょっと待って。あの、私あなたの好意をお断りしたの。
 いえ、今盗み聞きをする全ての英傑たちに対して」
「いや、将軍は英傑──俺が所有出来る可能性がある事を自身で証明したにすぎぬ」
「え、でも、いえ、私、ああ……」
「己の首を絞める結果となったな。まあ、俺としては好都合だ」
 謀られた。
 独神は頭を抱えた。
「私は……独神として英傑の力を借りる以上、特定の誰かの好意に応える事は出来ない」
「そう強がっていると良い。どうせ俺に篭絡されるのだ」
 笑われる。

(かっこよく書きたかったので大失敗した例。判りやすいボツですな)


ミチザネサマ

 独神はよそ見をしていて、ミチザネにぶつかる。
「騒々しい。もっと落ち着きを持てないのか」
「ごめんなさい」
 深く頭を下げる独神。溜息をつくミチザネ。
「もういい。こんな所、他の者に見られると面倒だ」
 すっと避けていくミチザネ。
 その後ろ姿に
「ごめんね」と声をかける。

 廊下を歩いていると、タキヤシャに見つかる。
「将軍様にぶつかったわね」
「はぁ……また、厄介な」

「それに、酷い物言い……。将軍様の繊細な御心を傷つけるなんて……」
「お前のような者がいるから、あのような対応になるのだ」
「なら、あなたの言う厄介な者がいなければ、将軍様へどう対応していたの?」
「……知らぬ。そんな日が来る筈なかろう」
「ふうん。……あなたはわたくしの脅威になりえぬようね」
 すっと引く。
「安心したわ。ありがとう。臆病者に感謝を」

(かっこいいタキヤシャヒメ好き。ミチザネは踏み込むことに臆病なくらいが丁度良い。色恋よりも人としての信用信頼が重要)


ツチグモ(ちょいえろ)

 平和になった後の話。
 みんなところを回っていくよ。

 ツチグモの所へ。
 悪名が知れ渡っていたので、見つけることが出来た。
 ツチグモはツチグモで今までだったら、山にくる旅人を襲って楽しんでいたが、
 独神に会ってからは、なんだかその気にもならない。
 おどかす事はするが、殺すまではしていない。
 悶々とする。暴れ足りない。でも殺すのは躊躇う。
 イライラする毎日。

 そんな時に、山に新たな旅人がきたことを糸が伝えてくれた。
 珍しく女だった。さて、今度は如何してやるか。
 糸で吊り上げてやり、その間抜け面を見に行ったら。
「主!」
「こんにちは。手厚い歓迎ありがとう」
 目の前の現実が受け入れられず、ぼやっと見てしまう。
「吊るされた事なんて、初めて。頑丈な糸だから安定感があるのね」
「そうじゃねぇだろ!」
 どすんと落ちる。
「いたた……」
「何しに来た」
「何しにって、あなたに会いに来たの」
「は、はぁ?何故」
 予想外の訪問者で少し狼狽える。
「みんなの所を順に回るっていう気ままな旅よ」
「ほら、ちゃんと手土産も持参しているのよ」
 にこにこ。
 舌打ちツチグモ。まんざらではないが、事態をあまり呑み込めていない。
「面倒くさい主だ。好きにしろ」

 小さな炭小屋で生活しているツチグモ。そこに独神も来る。
 こじんまりとした酒宴。
 変な気持ちのツチグモ。現実感がない。なんで主が居るのか。
 胸の中のわだかまりはなくなっていた。主への戸惑いが広がる。
「主が酒を飲むなんてな」
「もう戦いはないもの。あっても八百万界から見て小さな諍い。独神が出る幕はないのよ」
 何杯目からか、顔が赤くなる。
 酒に弱かったのかと思っていると、独神のテンション高くなる。
 それにやけに近い。
「ツチグモの髪は長いねー」
 触ってくるし、編もうとする。
「触んな」
「少しくらい許して」
 三つ編みされる。人形状態。
 後ろに回ればいいのに、何故か前から触る。
 抱き付いているというか、もたれているというか。
 こうなるとツチグモの方が気にする。
「おい。やめろって言ってんだろ!ああ!」
「綺麗にするから大丈夫」
「そうじゃねぇ」
 変に距離が近くて、あれだけ遠い存在だったのに。
 なんでこんなことに。どうなっても知らねぇぞ。思い知らせてやる。
 自分のすぐ横にいる独神に口づける。
 嫌がるなら組み敷いてやると思っていたら、意外と抵抗しない。
 ただ初々しい反応を見せる。身体を縮こまらせて、不器用な息遣い。
 どこまで嫌がらないのか。
 舌を入れて、首に触れて、衣の中に手を滑らせて。
 独神は涙を浮かべながらも嬌声をあげ、停止を求めても、拒否はしない。
 完全にその気になってしまったツチグモ。
 胸をまさぐり、衣をはだけさせて、もう一線……と言う所で、独神は寝た。
 死んだわけではなく、寝息は立てている。
「おい!主!貴様ここまでして寝るなんて許さねぇ!起きろ!」
 全く起きない。ツチグモは悪態をついた。

 次の日。
 昨晩の事に嫌味を言うが、どうも通じない。
「とぼけんな!」
「ごめんなさい。……でも、どうしてそんなに怒っているの?昨日の事でしょう?
 お酒を開けて、あなたと話して……。どうしたっけ……」
 全く覚えていない。ツチグモは袖にされていると思って追究するが、覚えていなさそう。
「主……今まで飲酒ってどうしてたんだ」
「殆ど飲んだことがないの。思考が鈍るでしょう。だから」
 だから知らなかったのか。本当に?と、色々疑う。
「今後、酒は飲むな」
「え!?……それは、ちょっと、難しい……かも」
「ああ?」
「今までごめんね、って言ってきたんだもの。それに約束があるし……」
「放っておけ!」
「……困ったわね。ならまた謝るとして、一件だけは無理よ」
「俺がこんだけ言って駄目ってどういう事だ!」
「スクナヒコだけは無理!」
 なら会うなと言っても、聞き入れてくれない。
「チッ。勝手にしろ!」
 で別れる。

 出雲へ。
 スクナヒコやオオクニヌシと飲んで、やっぱりやらかす。
 次の日に、スクナヒコには「一生飲むな」とまで言われる。
「やっぱり、何かしちゃったの?ツチグモも駄目って言ってた」
 とりあえずやばいことは言わず、嘘ではあるがどんな迷惑行為をしたかを告げる。
「謝っても、謝り切れません……」
「良いって事よ。それより、他の奴にはやめときな」
「はい……」
「主君、そう気を落とすな。得手不得手はあるものさ」
 と言って、帰す。
「……お頭、ありゃやべーな」
「ツチグモ、と言っていたが、彼もまた見たというか、やられたというか……」
「どこまでかは知らねぇがな。吹聴しなけりゃ良いけど」
「一応文を送っておくか」
 しかしツチグモには届かず。定住していないからだ。

 しばらくしばーらく経って、独神がツチグモの元に訪れる。
 以前はごめんなさいと言う。
「あまりの醜態で謝罪が遅れてごめんなさい」
 聞き出すと、独神は勘違いしている。というか、スクナヒコ達に嘘を教えられ、さらに、飲むなと念を押されている。

 今度は酒なしで、独神を襲ってみると、逃げられる。
「そういうの、怖いからちょっと……」
 バラしてやりたいが、なんとなくやめる。

 なんとなくくっつく。
 それなりに平和に過ごすが、ツチグモなので問題も起こす。
 そうなると引っ越し。

 ある日小屋の中が怪しいと思う。
 ツチグモは独神を小屋に待機させ、外へ様子を見に行く。
 すると、糸をかいくぐって、モモチが出てくる。
「モモチタンバ!久しぶりね!」
「……主殿」
 少し口元を緩めるが、すぐに元通り。
「貴様俺の糸をかいくぐってまで何の用だ」
「用があるのは貴殿ではない。主殿、これを」
 そこで文を渡された。ハハキガミから。
 諍いが起きて、大きな戦いになると言う。
「……あなたは、どの陣営についているの」
「俺が従うのは主殿だけだ。今回は主殿への届け物だった為に了承しただけの事」
「そう……。……え?」
「貴様今までずっと主についてきてやがったな」
「見守っていただけだ。でなければ、三度は盗賊に襲われ、五度荷物を落として路頭に迷っている」
「あれ全部モモチタンバだったのね……。お世話様です」

「行くわ。ツチグモ、暫く離れるから留守をお願いね」
「馬鹿。俺も行くに決まってんだろ。面倒だがな」
「判った。あと……私は独神として行くから、そこは留意しておいてね」

 争いが大きかった。
 相手の大将に話をつける事になった。
 すると、そこにはマサカド。
 また民の為……というか担ぎ上げられたらしい。
 ガス抜きの為だと言う。独神はそれに協力することにした。
 ほどほどに戦う。
 そしてお互いが疲弊し、和平を結ぶ時、公式の場で独神とマサカドが顔を合わせた。
 和平を結ぶ際、マサカド側の者が独神を襲い、それを庇ったマサカド。
 見かねて、二人を糸で投げ飛ばしたツチグモ。
 知らない山に着地した二人。
 二人きりになり、マサカドは独神を口説くが落とせず。
 マサカドは別に、民の為に戦ったのではなく、自分が血を見たいから、と独神を引きずり出すためだったそうな。
「しかし、もう他の奴の手がついた後とはな」
「悠長にすべきではなかったな」

 マサカドと居た事、ツチグモには嫌な顔をされ、怒られる。
 そこでマサカドが挑発するので、しっちゃかめっちゃか。
 ほとぼりが冷めるまで遠野へ身を寄せる。

 ツチグモは支配者であるヌラリヒョンを嫌う。
 独神とヌラリヒョンが前から仲が良い事も嫌う。
 罵倒されまくる。
 そしてヌラリヒョンと戦う事になる。
 主は手を出すなと、ヌラリヒョンに言われるが、
 ツチグモが傷つくのを見ていられない。
 最後には独神の力を使おうとまでしてしまう。
 その時は、ツチグモに止められる。
「主はそういう事は似合わねぇ」
 汚れた事はさせられない。自分でなんとかすると言って、頑張る。

 ヌラリヒョンは別に殺したいわけではなかった。
 ただ、好意を寄せていた独神が酷い扱いを受けているのが気に入らなかった。
「主が全て受け入れるからと言って甘えるな。そして驕るな」
「表に出る事を止めたとは言え、あの人は独神なのだ」
「ははっ、主に集まった者達の全てが其方を見ておる。隙を見せれば食われるぞ」

(ヌラリヒョンに落ちないパターン。妖族の強者にツチグモが勝って欲しかった。
 私は微えろが大好きなので、こういう無駄なちょいえろを不必要に入れてしまうのですが、投稿作品に成形する際に消す)


イワナガヒメ(※男独神)

「イワナガヒメー俺だー結婚してくれー」

 男独神。
 とにかくイワナガヒメが好きで、朝から晩まで付きまとう。
 口癖は「結婚しよう」。唐突に言う。

「料理なら俺が出来るから大丈夫だ。だから結婚しよう」
「い、いえ……そういう問題では」


「私自身も驚いています。まさか、離縁を宣言され、家に帰された私が、今度は人の求婚を拒否する側に回ろうとは……。それも毎日」
「それだけ聞いたら悪女ですけれど、主様のあれは……少し……度が過ぎていますから。仕方ありませんよ」

「大切な言葉なはずなのに何度も何度もおっしゃって。御戯れはよしてほしいのに……」
「(言いたいから言っているだけのような気がしますが、ねえさまには逆効果ですよね)」

「君が首を縦に振るまで、俺は言い続ける所存だ!」

「な、ならば私と勝負して下さいませ。私に勝ったら、めめめめおとになな、なる、とおもい……ます、なります!」
「その興、乗った!乗ったぞ!!!証人はこの場の英傑全員だ!」

(ラノベ的なノリにしたかったんだろうなあ……。玉砕)


シュテンドウジ

 全責任は独神にある。
 と、主張する独神に、シュテンドウジが、

 はぁ……。あのなぁ、おれはおまえの為に、なんて理由で戦ってねぇから。
 おれは山にいる仲間の為、本殿でバカやってる奴らの為、……八百万界の為に戦ってんだ。
 おれのやりたいようにやった事を、おれが責任を持つのは当然だろ。自惚れんな。
 だから……頭領だからって、何もかもしょい込むな。こんな小せぇ肩に全部乗るわけねぇだろ。

 担がれちまったおまえは頭領らしく振る舞わなきゃなんねぇのは判ってる。
 けど、いくらなんでもやりすぎだ。それと、おれらを舐めすぎだ。
 おれたちは守られる為にいるんじゃねぇ、共に立ち向かう為に集まった、そうだろ。


 膝の上に乗せる。


 ったく……。最初はおれとおまえだけだったのにな。……いや、すぐにモモのガキが来たような……まぁ細けぇことは気にすんな。
 仲間が増えると賑やかになる分背負うもんが増えちまう。
 だから頭領は信頼できる奴に、ちょいちょいしょってるもんを渡しちまうんだよ。
 じゃねぇと自分が潰れちまって、仲間を守るどころじゃねェからな。

 遠慮すんな。シュテンドウジ様が直々に構ってやんよ


 独神は首に手をまわした。シュテンドウジは背を撫でた。

(本編でライターに背負わされている役割と、実際客にウケた役割が違うキャラと認識。私はちゃんと鬼の頭領やっているシュテン好き。どうしようもなく自分勝手で子供っぽくて呆れちゃうけれど、しめる時はしめてくれる。血だらけになっても守ってくれる。他人を背負うだけの器と度胸のある奴)


アシヤドウマン 

 くるくると。次から次へと別の英傑の相手をする独神。
 それが不満。平等故に物足りない。
 とはいえ、邪魔をするわけにはいかない。
「俺の傍にいろ」と言ったところでやんわりと断られるのだ。
 やんわり、というのがまた傷つく。

 だったら、夢で会えたら、夢の中で独占するなら許されるだろう。
 さっそく、調合。香を作ってみる。
「主人、少しいいかな」と、夜に訪ねてみる。
「随分忙しいようだからな。よく眠れるように調香した香だ。受け取ってほしい」
「ありがとう……。早速今夜使ってみるわ」
「ああ、それじゃあおやすみ」
「おやすみなさい」
 で、自分も就寝、そして同じ香をたく。
 これで、夢の中でつながるはずだと。
 つながったが。
 何人ものアシヤドウマンが独神を囲んでいる。
 自分が本物だ、自分が自分がと主張している。
「ええい、貴様らは偽物だ。喼急如律令」
 消える。
「すまない主人。余計なものも呼んでしまったようだ」
「えぇ、大丈夫。大丈夫だけれど……あなたが本物であるという証拠は?」
 警戒している。
「くっ、その言葉は最もだ。しかし……」
 証拠がない。
「就寝前に香を渡したのは俺だ」
「そうね。でも直近の記憶は他者が読み取りやすいの。証拠にはならないわ」
 お人よしの主人にしては厳しい。
「ならば、一週間前にセイメイと術比べをして勝ったのは俺の方だ」
「あれは引き分けだとアベノセイメイから聞いているわ」
「っ、おのれ、セイメイ!」
 こんなところまで邪魔をする気かあの狐め。
「ならば、本物のアシヤドウマンしか知らぬ秘匿を教えよう」
「今まで秘匿ならば、私が本物と判定する手立てがないわ」
「心配には及ばない。聞けば判るさ」

 で、独神のことがいかに好きか、どんな気持ちでいるかを延々と話し続ける。
「判りました!十分です!あなたは本物のアシヤドウマンです!疑ってごめんなさい!」
「俺と判ってくれて嬉しいよ、主人。さて、話の続きだが」
「え!?も、もう証明は終わったからその辺で良いんじゃないかしら?」
「いいや。興が乗ってきたからな。今夜はこのまま寝かすつもりはない」
 その日も独神は寝不足だった。

(珍しく甘い系だ……)


タマモ

ふっと避ける。
「汗、たくさん掻いてるから」
決まり悪げに苦笑する独神。
ずいっとタマモ。
「尊く美しい九尾の狐を引きずり落とそうとは思わぬのか」
悲痛な顔。(大事にされて、崇められて、距離を作られるのがたまらなく切なくなる)
「自分の元に上がってこい、ではなく?」
きょとんとするタマモ
「……


タマモが独神をなめる
「……美味しくないよ
「まずい。真面目で狡くてどうしようもない者の味がする」
「……嫌いではない。嫌いになれぬのだ」


「主人殿の意地悪は度が過ぎておる。全く可愛くないぞ
「ごめんなさい。何が嫌だったのかよくわからないのだけれど…

「主人殿に避けられるくらいならば、夏など無い方が良いわ。そうじゃ、いっそわらわの妖力で一帯を死の地に沈めてやろうぞ。光が届かねば暑くもあるまい。
「ちょっと待って。そんな事されるのは困るわ
「わらわをこうしたのは主人殿じゃ

「傷付けるつもりは無かったのよ。ただどんな時でも美しい金色の狐を私なんかが汚せないと思って」
「それが嫌じゃと言うておるのだ」




「時には強引に迫ってくれても良いのじゃぞ。

「些細な事で心を乱される。まるで生娘のようじゃ」





**流れ

タマモが買い物から帰ってきて、独神の部屋に来た。
働いている独神。よしよしよく頑張っておるの。と水まんじゅうをあげる。
ありがとうと受け取る。共に味わおうではないか。
青竹の楊枝を渡す時、一瞬躊躇われた。
気にせず食べる。独神はおいしそうに食べるので、何かの勘違いだろうかと思ったり。
小さな違和感が気になる。さらっと聞いてみる。
今日は暑いでしょう。指先まで汗ばんでしまってね、そんな状態であなたに触れると悪いなと思って。
なんてことない気遣い。それがたまらなく切ない。
例え滝のような汗で濡れていようと、泥に塗れようとも、主殿が触れてくれるのであれば悪い気はせぬよ。
そう言われるのは嬉しいけれど、金色の九尾狐を穢すのは気が引けるわ。あなたはとっても綺麗だから。
……感心せぬな
なればそなた、わらわに千代に八千代に触れぬ心づもりか。この美貌と身体を放任するとは全く、堅物具合にも程があるぞ。
そ、そういうつもりは、なかったんだけれど……
否。主殿はわらわを持ち上げ褒め倒す割には、わらわを一番に寵愛せぬし、寝所にも訪れぬではないか。
ため息
みっともない狐と笑うが良い。どんな形であれ主殿に袖にされるのは、胸が苦しいのじゃ。
思わず赤くなる独神。
……タマモゴゼンって、やっぱり凄い、よね
何がじゃ。
そういうところ
してやったりとにこにこしているタマモゴゼン

(雰囲気で察して……)


アシヤ

「先生、いけないよ。暫くは暑いのだから無理は禁物だよ」

と、スザクと話していると、途中でドウマンがくる。
あ。となる。

「見回りお疲れ様です。

「主人……とスザクで分けてくれ」
「いいのかい?君は先生の為に用意したんじゃ」
「いや、気にするな。俺は失礼させてもらう」

「また気を使わせてしまったな。
疑問顔の独神。
「度々あるんだ。彼は陰陽師で、僕は四霊獣の朱雀だからね。

「彼にはよくしてもらってるし、他の皆の事も気にかけてくれているよ。

「僕も神族だからね。よくしてくれる者には色々してあげようと思うのさ」

「彼の中にある激情はなかなか親近感を覚えてね。

(アシヤは陰陽師。そういう面もしっかり書いていると、間抜け晒してもキチッとしめられるというか。でも結局しまらないんだなあ……)


ツクヨミ

「主(あるじ)ちゃん、最近オネエサマみたい」
「と言うと?」

 つまり、と前置きツクヨミは言った。

「ババ臭いってことよ」

 独神は激しくむせた。

「外見を諦めてる感が哀愁誘うし、そのせいで本殿が今流行りの真っ黒組織を彷彿とさせるわね。
 正直、夢も希望も感じないわ」

 ぐさり。独神は奥義レベル最大の因果律をくらった(くらってない)。

「……た、確かに。装いも日々変わらず、昨日の献立が覚えられないくらい早食いで、気づけば日は沈んで昇っているけれど……」
「そんなんじゃあっという間にオバァチャンよ!」
「あ。はい」

 ツクヨミの主張は認めるが、何も独神がわざと忙しくしているわけではない。
 梅雨が明け、今度は湿気を含んだ不快な暑さが襲ってきたが同時に悪霊も大量に動き出した。
 好天により進軍しやすくなったのだろう、独神は救援要請の対応にてんやわんやであった。
 六月上旬から息を抜けた記憶がない。

「外出は無理にしてもお洒落で気分を変えるくらいするべきよ!……でも、やる事あるし、そんな暇なんて……って反論するだろうから、ドンッ!」

 障子を勢い良く開けた。

「独神様、このような慌ただしい参上真に申し訳御座いません」
「普段ワタシ達を容赦なく捌いてるショウトクタイシちゃんなら、主ちゃんの仕事を任せても大丈夫でしょ」

 独神は首を横に振った。

「現時点でかなり任せているのに、これ以上はちょっと……」
「ツクヨミさんがおっしゃったからだけではありません。私個人としても、独神様はもう少し休んでいただきたいと思っております」
「でも……」
「ええ、理解しております。英傑が身を投じて戦っている間に遊びに興じて良いのか、というご心配ですよね。
 英傑の立場から申し上げますと、日々やつれていく独神様を見る方が心が痛み、また己の非力を嘆いて士気が下がるでしょう。
 ですから、独神様はお気になさらず時には任を忘れて気分転換なさって下さい」
「……隙がないわね。判ったわ。申し訳ないけれど今日はあなた達に甘えさせてもらうわね」

 ツクヨミは飛び上がって喜んだ。

「さっすがワタシ。人選は大正解ね」

 事務をショウトクタイシに任せ、ツクヨミと独神は自室で着物や装飾品を広げた。

「主ちゃん衣装持ちのくせに全然着ないわね。……ちょっと!これなんて生地が全然違うじゃない!」
「それは確か悪霊退治のお礼にって送って下さったものね」
「着なさいよ!こんな綺麗な着物ワタシが着たいくらいよ!って、ワタシに渡してどうすんのよ!!着るのはアンタでしょ!!!!!」
「(こんなに怒鳴って喉は枯れないのかしら)」

 ぼんやりとした独神をせっつき押し付けながら、ツクヨミが納得するまで独神を着飾った。

「完・璧よ!折角だから本殿にいる英傑に見せつけてやりましょ」
「ここしばらく皆と雑談なんて殆どしてなかったし、回ってみましょうか」

 独神が差し出した手に触れず、ツクヨミは下から睨んだ。

「……主ちゃん。判っていると思うけど、仕事地獄から解放してあげたのは他の子の為なんかじゃないんだからね」
「承知しておりますよ。ツクヨミ様」

 やや強引に手を引き、足取りが重くなってしまったツクヨミを連れて本殿を散歩した。
 執務室に籠っていた独神が顔を見せたことで、英傑たちは各々喜んでいた。
 それぞれととりとめのない話をし、時にそれが長話になってツクヨミに手を抓られたりした。
 何度も機嫌を損ねそうな場面はあったが、今日の装いをツクヨミが選び、気分転換を可能にしたのもまたツクヨミ(とショウトクタイシ)である事を毎度伝えていた事で最悪の事態は免れていた。

「……主ちゃんって卑怯よね」
「じゃあ部屋に戻ろうか」
「別に……いいわよ。主ちゃんを心配してたのはワタシだけじゃないし、顔くらい見せてやりなさいよ」
「言ってくれたらすぐに部屋に戻るからね」

 ツクヨミとしては、独神が誰かと話すことは面白くない。一瞬与えられる疎外感が不快だった。
 それでも「まあ仕方ないから自由にさせてあげるわよ」と思い続けられたのは、部屋からずっと繋がれた手のお陰かもしれない。

(公開した気がしないでもない。ツクヨミはキーキーヒステリック幼女と書くより、月のような多面性を描くと深みが出る。大人びたヤバイ方のツクヨミは自本殿シリーズで書いたと思う)


ヤシャ

「今夜、時間あるか」

 と、下総への遠征から帰還したヤシャが簡潔な報告の後に独神へ尋ねると、二つ返事で了承した。

「わかった。迎えに来るから寒くねぇようにして待っていてくれ」

 それだけ言うと、ヤシャは何事もなかったかのように部屋を後にした。
 詳細は判らないが外出のようである。何を着ようかとぼんやり考えながら独神は元の職務へと戻った。


「ここは夜でも騒がしいからな」
「妖の子達はこれから活動だからね。散歩しててもよく会うわ」
「厄介な……」

「アンタとの時間が減っちまうだろ

「少し所用があるのよ。……ごめんね」

「正直、溜飲が下がった。アンタはすぐみんなって言うからな」

 事実である為曖昧に笑っておく。"みんな"を嫌がる英傑が多いのは理解しているが、心からそう思っている故に基本的には口に出している。


 ヤシャと隣に座っていて。
「もっとこっちに」
 と、言うので近づく独神。
「もっとだ」
 もう足が触れ合っている。隣にと言われてもこれ以上いけない。
 意図を図りかねていると、ヤシャに抱き着かれる。
「そのまま跨げ」
 戸惑いながらも、膝に乗る。
「独神様の心音も随分早いな。こんなこと、他の奴らで慣れたもんだと思ってたが
「数はあっても、恥ずかしさにかわりはない、から
「数ある、ねぇ」
「嘘を吐かれるのも、それはそれで嫌でしょう
「……まあな

 傍にいると落ち着く。
 近すぎると落ち着かない。
 余計な事を考える。もっと深く触れ合いたいとか、結局独神が誰のものでもないこととか、他の奴らとの関係とか。
 巡る思想はいいものばかりではない。

「こんなの平和になった後に考える事だ。判ってはいるんだがな……修行不足だな
「初めての事で狼狽えちまうなんて情けねえ」
「アンタは八百万界が平和を取り戻すと、本気で思ってんのか」
「そうか」
「アンタの言葉は迷いを断ち切ってくれる。流石だな、独神サマは」
「己の役目を見失っている時は、また頼む」



(扱いが難しいヤシャ。みんなが望む像を作るのが難しくてあまり書かない。嫉妬分が強すぎてもよくない。八部衆として役目を果たしているからこそ輝くというか。
 嫉妬が嫌いってわけじゃなくて、嫉妬で役目を蔑ろにしていると「ちゃんとせえや」と読者につっこまれる可能性が上がり、話に入る前にブラウザバックされるので、なんかこう……難しいんですよね……。
 それとも嫉妬ガンガンでも大丈夫だったりするのかなあ……。嫉妬+エロ量産でも良いのかなあ……。うーん、判らん!)


アカヒゲ

「頭領さん、前から聞いてみたいと思っていたんだが、偶にこの部屋でじっとしてんのはなんでだ
「……身を引き締める為、ね。
「それ以上引き締める事があるのかい。

「あなたが忙しいと私のふがいなさを感じるわ。
「医者のあなたが暇な世界になってほしい、なんて思ってたらご飯を食べ損ねてしまうわね、ごめんなさい

「おれにとっちゃ、怪我だろうが病気だろうが、大小は関係ねぇ。

「大事なのは治療法でなく、本人の生命力なんだ。おれにできることは微々たるもんさ

「頭領さん、あんたはちゃんと生きてくれよ。しっかり踏ん張って踏ん張って、それから臨終するんだ。
 本来の生命力をしっかり使って欲しい。自死なんてしないでくれ。

「あんたが誰かの為に何もかもすり減らしているのは判ってる。
 戦いが甘くないことも判っている。でも医者としちゃ、あんたにも命を大切にしてもらいてえんだ。

「心しておくわ
「みんなの幸せ、の中にあんたを入れ忘れるなよ

「覚悟を決めることと、命を懸けることは似て非なるものだからな。

「酷なのは承知だが、自分の最期を決めつけないでくれよ。それこそ最期まで。

「医者は口うるさいもんだ。おれも何度も言ってやる。

「……医者がくいっぱぐれるのはいつのことやら。

「おれは病気と怪我以外は治せねえ。


 @


 話としては何が書きたいんだ?
 アカヒゲがちゃんと医者なんだなってとこ?


 遠くを見ている独神と、アカヒゲ。
 部屋に二人でいる。
 アカヒゲから話しかけた。

「前々から気になってたんだが、部屋の隅で何してんだ?あんたには何か見えてんのか」

 独神は猫の如くしなやかに振り返ると、一拍置いてにこりと笑った。

「何も居ないわ。ここにはあなたしか居ないじゃない」
「それにしちゃ一向におれと視線が合わねえな」

 軽い口調ではあるが、訊問の色が濃い。独神は観念して己の行いを語った。

「私、あなたが仕事をしている空気を見ているのよ。妙な行動の自覚はあるから黙っていたのだけれど」
「確かによくわかんねえ行動だ。それで、頭領さんは何を感じるんだ」
「……私はふがいないなあ、って」

 独神は依然として微笑んでいるが、それは見たままを受け取っていい類のものではない事をアカヒゲは感じていた。

「不甲斐ない?この八百万界であんたほど悪霊に立ち向かっている奴はいないと思うがな」
「そんな事無いわ。悪霊を倒す力の有無に関わらず、困難を前にして決して矜持を失わず希望を失わない者は沢山いる。
 ……なんて、私よりあなたの方がよく知っているわね」

 アカヒゲは本殿に属する英傑であるが医者故に各地で身分問わず無償で医療行為を行っている。
 その地の統治者から、人々から疎まれ追いやられたような貧民までが彼の患者だ。
 八百万界の民を見る機会はアカヒゲの方が桁外れに多い。

「未知の侵略者へ抵抗し続けられてるのは、あんたが英傑をまとめてくれてるってのもあるだろ。
 あんたの行動が直接的間接的に」





 独神は己の無力さを嘆く。
 そうしたら、アカヒゲは元気づけてくれる?
 でも頑張ってるんだからええんやで、なんて軽い事は言わないと思う。

「戦乱の巷と化した八百万界では、怪我も病気も絶えねえからな」
「この界を守る手立ては戦しかない。……と、

「戦を止めたいと言いながら、誘発しているのも私なのよ」
「ああ、心情はどうあれ実際はそうだな」
「医者から見りゃどんな信念、志があろうと、戦になれば仕事が増えちまうからな。……って、頭領さんを責めてるわけじゃねえんだ。あんたが悪霊をぶっとばして平定を望んでいるのは判っているつもりだ。だが、力もない、知識も金もないモンからすりゃ同じことだ」
「……
「ああ、いや、頭領さんの気骨は尊敬しているし、実際救われた命も数多いんだ。……悪いな頭領さん。おれは医者としてしか見られねぇ」
 かぶりを振った。
「いいえ、あなたは間違っていないわ。

「……ここにいながら人を遣って各地を騒がせていると感覚がおかしくなっていくの。だから、誰彼隔てなく平等に命を見るあなたの傍に居ると、少しだけ驕りから覚めるの」


(まとまらなかった話)


コジロウ

 なんでもいう事を聞くと言った独神。
 こじろうは言った、「じゃあ嫉妬してくれ」と。

 意外と難しい。

「……俺が他の奴と飯を食うのは何も思わないのか?」
「……………!」

 そもそも嫉妬しないんかい。そもそも他人に無関心なんかい。
 そうやってぐちゃぐちゃ思って、やっぱりこんなことしなきゃ良かったとか思っていた。
 でもだんだんと独神も変わる。

「え、あなた他の人と飲みに行くの?あなたの為に時間作ったのに?」

 と、夜に言われて、思わず笑うというか、ぐっとくるというか。


ガシャドクロ

 傷を受ける独神。
 たいそうなものではなく、ちょっときったとかそんな。

 ガシャドクロが妙に見てくる。
「……気になる?」
「っ。いや。別に食べようなんて思ってない」
「怪我の心配をしてくれているのかと思ったんだけれど……違ったかしら」
 笑っている独神。
「判っているなら、からかわないでくれ」

(ガシャ。私にかかると基本シリアスなので、何気ない日常のほんの一時……だけがほのぼの路線にもっていける)


サトリ

「(今日も可愛いなあ、好きだなあ)」
「ねぇ、主ちゃん。アタシのことどう思う?」
「今日も可愛いなあ、好きだなあ」
「えへへ」



 暗い事を考えないようにする。

 暗い事を考えそうになると、渇を入れてもらう。
 エンマやカシンコジや、テンカイや。説法を聞いたり。頭をからっぽにする。


 戦いの中で、平等でいなければと思うのに、どうしてもサトリのことをかばってしまう、戦いから遠ざけてしまう。

 サトリとイチャコラしすぎて、日常業務に支障がでる。
 短期的ににものをみるか、長期的にものをみるか。
 そこで、サトリといっちゃらこっちゃらがっつりして、その後は離れることに。

 長期的ににかんがえて、今はふんばるときだとおもって。
 どうしてって。
 平和になってサトリと安心してていちゃこらしたい。けっこんしたい。
 だからそのためにはまず、へいわにしないといけない。

 とか。



 あたしは人の心をよめるけど、あたしの心の中は読めない。
 心の中まであたしを幸せにすると断言できる主ちゃん。
 あたしは、主ちゃんを絶対に幸せにするって、自信ない…ごめんね、あたしだけ、ずるいよね。
 それも、主ちゃんにはあたしがこう思っている事さえ知ることができない。

 主ちゃんは誰にも弱みを見せられないのにね。
 あたしだけ、弱くいられるなんて、ずるいね。

 サトリは心を読めるが、だからといって、相手の所作なんかを軽視しているわけではない。

 主ちゃんは読めるけど、読めないことも多い。
 あたしが無意識に読まないようにしてたとおもってたけど、多分それだけじゃない。
 意図的に、見せない部分がある。それも、強固に守られていて、覚のアタシが本気を出しても見えるかどうかわからない位。
 何を隠しているんだろう。
 何のことだろう。誰の事だろう。……あたしのことだったりするのかな。

(サトリのガチ夢小説。お互いに想っているんだけれど……。相手を想うが故に不安になる。無茶をする。そういう真っ直ぐな感じのシリアス話)


ツチグモ

 お伽番になっても、部屋にはいない。

「主といると息が詰まる。
 とかなんとかツチグモは言う。

「おや、一人かい?
とフツヌシ
「ええ。ツチグモは……多分、近くにはいると思うわ。


 フツヌシが近づこうとするが、止める。

「ふふっ、そういう事か」
「?」
「主、ちょっとこちらに来てもらえないかな」

 近づくと、何もない。

「どうかした?」
「いいや。随分器用だと思ってね。ならこれはどうだろう」

 とん、と押す。バランスを崩す独神。
 その肌に傷がつく。

「……

 独神は自分の血に驚いた。

「おやおやかわいそうに。私が手当してあげよう。
「一応お礼は言うわ、ありがとう。……けどそもそも、私で試すのは止めて貰いたいわね。
「私が試すのも刺激的だろうが、如何せん直接殴り合う方が得意でね。なんなら間抜けなお伽番に注意をしてきてあげてもいいよ
「ツチグモは悪くないわ。



 ツチグモは傍にいなくても独神を守っている。



(フツヌシを悪くするのはやめるか?むしろ、フツヌシが怪我する方向にもっていく方が無難化か?)




「……落ち着かない」

 といって、帰るだけの人。コジロウやヤシャなんかは、糸が判っているから気持ち悪くてしょうがない。
 糸のことは独神に言わない。事情は察している。


「主、もう少しこちらに来ると良い。
 と、ハンゾウ。
「?
「そこにいると不都合だろうからな。俺としてはどうでもいいが
「?
「知る必要はない。主は気にするな。

全て判った上で、主に余計なものを背負わせないハンゾウ。
更にうっかり怪我をしないように、独神の座る位置を変更させている。
忍の鏡(世話焼き)


 ツチグモは独神と結ばれることまでは考えていないと思う。
 ただ傍に居たいと思うくらいで。
 なんとなく遠い存在。


 *


 共にいる独神とツチグモ。
 暇そうなツチグモ。
 他の英傑の話を聞いて、さっさと討伐に行ってしまう。

「俺がここにいても遣れることはないからな」

 と言って、戦って、帰って来て。また戦いに行って。
 か、全然帰ってこないとか。夜に帰って来て、とか。

「(主の意図が読めねえ。俺を置いたところで何の役にも立たないのは判っているはずだ。
 遣りたいこともやれることも、俺には狩りしかないってのに。
 ……まぁ、傍に居られるのはありがたいが」
「(どうせなら、主の役に立つ方がいい。主だってその方がいいだろ)」

すぐにいなくなるから、独神が不安に思う。

「そ、……そんなに私といるの、嫌なの?
「……は?
「いえ、なんでもない。忘れて。

「俺がここにいたって仕方がないだろ。傍に置くならちまちました作業が得意な奴が適任じゃねぇか。
「そういう事じゃなくて……
「まさか、そんなに俺といたかったのか?
「…………」

 黙ってしまう、独神。

「(冗談のつもりだったんだが……なぜこんな反応をする。全然わからねぇ)」

「まぁ……明日はいてやるよ。今日、それなりに狩ったしな」

(独神→ツチグモ。身分の差を自覚しているツチグモとの恋愛って難しそうだと思った)


アマツ

 アマツミカボシは我慢している。この戦いが終わるまでと。
 だれにも公表していない。
 そのせいで、他の英傑が独神にアプローチしたりする。
 もちろん独神は拒否するが。
 アマツミカボシとしては気に入らない。
 だから、独神は気を遣って、英傑との身体接触をしないようにした。
 そのせいで、体調が悪くても周りを頼れず、結局悪化してしまった。
 気を遣わせたことはわかっているアマツミカボシ。
 でも、だからといって、気に入らないことをやめられない。

 だから、独神と、この関係をやめようと提案する。
 別れようと。
 独神はそれを言われて涙した。何も言わないけれど、泣いた。
 アマツミカボシはそのまま退室した。

 その次の日。
「私は承認も、拒否もしていないからね!!
 泣きはらした顔でアマツミカボシを掴んで怒鳴りつける独神。
 そのせいで、この二人には何かあると他の皆にわからせてしまう。
 皮肉なことに、アマツミカボシが独神を拒否をしたせいで、みんなが独神に手を出さなくなった。
(アマツミカボシと関係があると思って、判ってしまって)


「誰?……って、誰でもいいか。もう私は使えないし。みんなだけでなんとかなるしね。

「アマツミカボシが憎たらしいわ。積み上げてきた信頼を全部一気に崩してしまったんだもの。
「でも、好意を抱いていたあの時よりずっと純粋に彼を思っていられる。
 憎しみって、そう悪いものでもないのかもね。

「以前は、戦いが終われば、二人で平和に暮らしたいと思ってたけど。
「今はもう、この八百万界に生きてくれるならそれでいいと思ってる。
 執着が消えたとは違うの。……拒否される言葉を聞くくらいなら、会いたくないってだけ。
 別の誰かを想っている姿なんて見たくも聞きたくもない。

「バカよね。……でもあの日別れを提案されて、すごく苦しかったのよ。
 八百万界を救えないことよりも、つらいのかもしれないと思った時は、独神としての存在意義を見失ったわ。
 救えなきゃそもそも私はここにいられないのにね。
「拒否なんて、出会ったときはずっとつんけんされてたのにね。なのにあの一回だけは忘れられないの。


(これも独神が本殿で神聖化されているパターン。アマツと付き合っている事がバレて、俗物だと思われてしまった。と言っても、別に大したことはないのだが、独神はそんな自分が許せない)


誰というわけではなく

 つい口を滑らせた独神。
 報われない恋がしたい。
 まるで、誰とでも簡単に付き合えるみたい。両想いが当たり前のようで不快。
 と、周りは思う。
 でも聞いてみると。
「独神と自分を切り離せない。でも、独神だから好きも、独神だから嫌いも、どちらも嫌だ。
 独神は人を引き付ける、魅力なだけじゃなく、そういう効果がもとから備わっている。
 だから、惹かれない人がいい。対等な恋愛がしてみたい。術に振り回されない、本当の恋愛が。

「本当に術なの?きっかけに過ぎないんでは?
「それは分からない。でも、自分で納得いく答えが見つけられてない。だから独神という皮を受け入れられない。八百万界を救うという目的がある間はいいけど、救って終わったら……。


(花をあげたら親愛度が上がる。独神だからと無条件で好意を向けられる。だから私は英傑達のことが好きでもどこか信用できないのだ)


イワナガヒメ

 仮面の上から口づけ。
 イワナガヒメ。
 仮面のままでもいいよと。

 好きなら知りたくならないのか?
 ただの戯れ?慰め?



 主様に愚痴ってしまった。私ったらはしたない真似を。

「良縁を見つけるために、その、……殿方とお酒を飲んだりお話したりしました。
「うんうん。どうだった?
「……剣の腕前を見たいと、その場で一番腕が立つ殿方が相手になってくれました。
「それでそれで?
「勝利しました。ええ、控えめに申しますと圧勝致しました。……はぁ」
「うん……なんとなくその後の事が判るよ」
「……お強いとご友人がおっしゃっていたのをつい言葉通りに受け取ってしまいました。
「ま、まぁそうだよね。本殿で『自分は強い』と言う人は本当に強いしね。その感じで接すれば、確かに……ちょっとイワナガヒメには物足りなかったんだね」
「……私が誰かと縁を結ぶことは、永遠にないのでしょうか。……死の終わりが訪れない私はずっと一人でいるしかないんでしょうね」
「言い方を変えれば時間はたっぷりあるんだから、そのうち見つかると思うんだけどね。……って、こんな言い方じゃ駄目か。
「いえ、主様が気遣ってくださっていることは分かっております」
「……なんか、ごめんね。私、助言上手くなくて」
「悪いのは私です。悪霊の事で心を痛めている主様に、余計な気遣いをさせてしまって……。
「……」
「……」


 腕をつかむ。かなり強く。
「……周りが見る目ないだけだから」

「見る目もなにも、私こそ、仮面で顔も心も閉ざしているのが悪いのです」
 口づける。
「……仮面のままでいいと思うけどね」
 イワナガヒメは逃げ出す。

 さっき何をされたんだろう。主様。
 腕が赤い。薄く爪痕が残っている。
 怖かった。わからない。主様が考えていることが。


アマツ

アマツとくっついた後。
ど健全。手はもちろんだしていない。
最高のシチュで告白して、段階もきっちりふんでプロポーズまでしようとするきまじめなやつ。
そんな二人。

手を出す前に、誰かに手を出され(誤解だが)、ぶちぎれアマツ。
結局誤解はとけるのだが。
独神が
「恨みは買い過ぎるほど買った。あなたが想像したような酷い事もないとは言い切れない。
 仕方ない事だと思う。でも、それならせめて、最初はあなたがいい。さいしょと最後はあなたがいい。」
「あなたが色々考えてくれているのは知ってたから、待つつもりだったんだけどさ。
 ……今日こんなことがあって、このままだと後悔しそうだなって」
「最初って一回きりなのよ。だから一生で一度の最初はあなたにつかいたい」

で、R18展開になって終了。

「空気読んで」と言って、見張りも遠ざけている独神。



勘違い部分。
独神がおかされたと聞いて、そういう意味かと思ったら、
他の術者による呪術で精神がおかされてしまったの意味だった。

アマツは、独神がたまにそういう攻撃を受けることを知らなかった。

「気持ち悪いよ。私じゃないものが中に入ってきて、思考や記憶を書き換えようとするの」

(えっらいご都合主義じゃの。ここ変更)



「ねぇ、変な事言うようだけれど、……怒ってくれてありがとう」
「独神なんだから、それくらい我慢しろって言われなかったの、実はほっとしたんだ」
「使命は大事だけれど、あなただって同じくらい大事なんだもの」

「俺は頭と離れたりしない。貴様が重いと思ったのならば全て俺に全て渡せ。貴様がなかなか願わん己の幸せを、俺が命を賭しても守ってやる」
「頭も己自身の為に生きろ。独神の名に服従するな」


ヌラとアマツ

ぬら×あまつ×独神


「……なんだか、その……随分……」
「俺では不足だとでも言いたげだな」
「いえ。逆です……」

二人は腕が立つ。剣の扱いは最上位だ。
良い悪いはともかく、どちらも影響力が大きい。
護衛は一人では心許ないし、二人なら不測の事態にも対応できるから、二人が良いとは言った。
だが、八傑に匹敵する程の力を持つ者が両隣に居るのは落ち着かない。
それにまだ周囲では戦が多く、今日だって多くの英傑を戦地へ派遣している。私に構う必要はないと思う。

「主との散歩は久方ぶりであるか。今日はゆっくり楽しもうではないか」
「視察、ね」

ヌラリヒョンはいつもの調子で目尻を下げた表情を向ける。
一方、アマツミカボシはどことなく不満げに目を吊り上げるのだ。
二人の対のような様子に自分が抱いていたものにようやく気付いた。
この二人の組み合わせが初めてなのだと。それに不安を抱いている事を。

「」

協調性がなく反抗的と言われるアマツミカボシであるが、特定の英傑さえ避ければ問題ない。



「爺に気を遣わずとも良い。

「煽っても無駄だ。貴様程度の思考は読める。
「はははっ、ただの世間話よ」


独神が民衆に罵られ、物を投げられ、ボコられているのを見る。

「頭を助けないつもりか」
「何故求められない手を出してやらねばならぬのだ。其方こそ手を差し出してやると良い」
「俺が他人を助ける義理はない」

そう言って、二人は見ているだけ。

「儂らのような得物は持たぬが、立派な豪傑よ」

ガス抜きも必要だから敢えて民衆の不満を受けている独神。
それが判っている二人だから、手を出さない。助けず見守っている。

「貴様はもっと、頭に甘いものと思っていた。随分冷たいのだな」
「儂も其方を思い違えていた。熱しやすいと思っていたが、随分忍耐があるようだ」
「普段は欲のままに動いていると聞こえる」
「そんなことはあらぬ。……」


「ごめんなさい! 待たせすぎてしまったわ!」
「構わぬさ。待たせるくらいが可愛げがある」
「頭」
ヌラリヒョンがじっとアマツミカボシをみる。
「……荷物を貸せ。頭の脚では今日中に戻れないからな」
「そう? じゃあお願いしようかしら。ありがとう」



『やさしくしないというやさしさ』


三貴神

 さんきしんかいぎ──と言うと仰々しいが、とどのつまり兄弟会議である。

 ごごごごご

「最近、鬼ヤローが主と腕を組んで歩いてた。ぐーたら剣士は主と買い物してた。
「モモくんとウシワカくんが主さまと手を繋いで都を歩いているのをみた
「……カエルちゃんとカエルちゃんのカエルちゃんが主ちゃんと寄り添って歩いているのをみた。

 と、他の八傑は、なんだか主君とおでかけしたり、なかよくやっているっぽい。
 なのに、なーんか、自分たちはやってなくない????

「この美しいアタシを差し置いてどういうつもりなの!?
 がくがくがくがく
「ふふふ、やっぱりこんなねくらひきこもりの太陽のかみなんて いやですよね。ふふふ、……首、つろうかしら。
「貴重な弟属性だってのに、なんで構ってやらねえんだ??おかしいんじゃねえの???
「モモちゃんと被ってんでしょ。つい世話をしたくなるようなダメダメ剣士もいるし

(兄弟やっている三人好き)


ホクサイ

 誰かが描いた独神の絵。
 それが気に入らなくてしょうがない。
 ゼアミは肖像権がうんたら言っていて、売るなら事務所を通せと言っている。
 そんなのはどうでもいい。
 だが、気に入らない。
 骨格がめちゃくちゃだから、肉のつきかたもおかしい。
 そういう手法かと思えば、それにしては背景が写実的すぎる。
 多分そういう手法でもなく、単に技術が足りなさすぎるだけだ。
 色の置き方も変だ。なんの意図も感じない。感情が揺さぶられない。
(気に入らないから買う、でもいい)

 気に入らないので自分が独神を書いてみる、
 独神はびっくりしていたが、頼み込んだら許してくれた。
 独神はいつもどおり変わらず仕事をして、自分はそれをずっと見てかいていた。
 だが、何枚書いても気に入らない。
 構図が嫌だ、表現が気に入らない、色合いが独神に合わない。
 何枚も何枚も書いても、全く良くならない。
 自分も、結局あの下手な絵と同じだ、修行が足りない。
 下手と言える身分じゃない。自惚れてた。……って話。

 または、
 絵の評価ではなく、ただ単に自分以外が独神を書いているのがいやだった。……。って話。

 または、
 買った絵の作者の事をたまたまきけて、
 すると、初めて描いた絵だと。勿論誰も買わなかったのに、今回売れて不思議だったと。
 聞いてみると、独神がたまたま自分の横を素通りしていただけで、目を奪われた。
 それが忘れられなったから書いた。と。
 今は売りにはだしていないけれど、何枚も書いている。
 なんど書いても自分が見たあの時の衝撃は描ききれない。
 一生のモチーフだという。
 それを聞いて「そうか」と。
 自分ももっと精進していかないとな、と思ったホクサイ。




「独神! なあ、ちょっと俺に付き合ってくんねえか?」
「んー、何するの?」
「アンタと行きてえ場所があるんだ。いいだろ?」
「良いよと言いたいんだけれど……」

 お伽番のカグヤヒメがむすっとしている。

「主様はカグヤを置いて、ホクサイ様と逢引きなさるつもりですの!」
「あ、逢引きって……」
「逢引きか……。うん、良いんじゃねえか。俺とアンタと」
「ただのお出かけです! カグヤヒメもそんな顔しないで。そんな顔も可愛いけれど」
「ちょっと褒められたくらいじゃカグヤの心は直りませんの。」

 で、でかける。

「ゼアミ……
「芸事への視察は必要不可欠ですから。それに……」
 ホクサイはもう何かを見つけて書いている。
「ホクサイ様は護衛向きではありませんから」
「はは……。一生懸命だからね。しょうがないね」
「まあ、そのおかげであなたとこうして二人で並ぶことが出来るんですが」
 笑っただけで、独神は何も言わない。


「独神! ゼアミ! アンタたち面白い顔するじゃねえか。ちょっと書くから待っててくれ」
「……(着くのかな)」
「駄目だ! 気に入らねえ!」
 びりびりびり

(ホクサイは他の英傑とはまた違った書き方になる。芸術家であって武芸者ではないから)


ヤシャ

 独神がほれぐすりを偶然飲んでしまい
「動物用だぞ!? 普通なら人でも神でもきかないはずなのに。
「妖はきくことが多いとかいってたが、まさか独神はきくとはな……


 とにかくヤシャについてくる独神。

「(追いもとめることには慣れているが。追われることには慣れてねえな。

「(俺はこんな重圧を独神様に与え続けていたんだろうか。

「やるべきことはやれ。当たり前だろ
「……判ったわ。じゃあ、ちゃんとやったら何かごほうびちょうだい?
「何故? 当然の義務を行った程度でなぜ褒美を与えなきゃならねぇんだ。甘えるな
「…………はーい。

「ちょっとアンタ厳しすぎない?
「あれぐらいでちょうどいい。独神様はもともとそういう方だろ。
「それはそうだけど……たまには甘やかしてあげてもいいとおもうけどねー。


「八百万界と民を愛していた主ちゃんの愛が、まるごとアンタに向かってるって素敵じゃない?羨ましいわぁ
「羨ましいもんかよ。
「何?重い?
「重い……のか、これは


「嬉しくないの?
「あれは薬のせいだろ。独神様の意思に反する行動だ。独神様に余計な恥をかかせるつもりはねえ。


「ほめてあげればいいのに。欲しい時に欲しい言葉をあげないと意味ないわよ?
 ふっきれてから言われたって、どんなにいい言葉でもごみ以下よ。

 ◇

「だって、怒った時じゃないと私を見据えてくれないじゃない」
「屈強な八部衆の一人が、上背も腕力も劣る相手を正面から見られないの?とってもおかしな話よね」
「あなたが私に対してややこしい事を考えているのは判っているわ。行動がちぐはぐだもの」
「あなたの本音が欲しいの。だから気遣いは無用よ」

「そっか。……難儀な人ね。あなたって」
「あなたの望み通り、私は独神とやらの仕事を全うしましょう。本来の私が戻っても滞らぬように」
「縋らないから安心して。そんなかっこ悪いこと出来ないわ。好きになった人の眼前では堂々としていたいもの。
 ……じゃないとあなた気を遣うでしょ?」

(多分これ最終的にはハッピーエンド)


チョクボロン

 何人かで飲んでいたら、酒に酔った独神に口付けられたチョクボロン。

 あの時は誰一人としてはやし立てることなく、即座に酒を片付け、ヌシ様を介抱し、部屋まで送り届けた。
 酒の席の失敗なんて笑い話になるものだが、ヌシ様の失態を見たオレたちが思ったのは「これ以上ヌシ様に恥をかかせられねえ」の気持ちだったのだと思う。その証拠にあの日の事は誰も口にしない。そんな話題になろうとも、決して口を開かず知らないふりをした。まるで示し合わせたかのような統一感。それはオレたちがヌシ様の事は特別大事にしていた事の表れだったと思う。

(これチョクボロンの方が翻弄される話だ)


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